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サブカル雑食手帳

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2008年10月04日

性生活の悪知恵

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三世新社が発行していた「実話雑誌」に秘本・秘写真の広告が数多く掲載されていたことは前回のエントリーで触れた通りであるが、それらの秘本の中で特にタイトルが傑作だと思われたのが「性生活の悪知恵」と題されたもの。もちろん現物を見たことはないのでここで内容について云々することは出来ないけれども、まず何より面白いのはこの「性生活の悪知恵」というタイトルが、昭和35年頃から昭和38年頃にかけて空前の売り上げを記録し、戦後最大のベストセラーといわれた「性生活の知恵」(池田書店)の秀逸なパロディになっている点である。ちなみに「性生活の知恵」という本は医学博士・謝国権氏が、「木製の人形を使い、図解でわかりやすく、性生活の体位を説明した当時としては画期的な本」(池田書店による説明)であり、昭和36年には大映で映画化(水野治監督)もされている。まあいつの時代も空前のベストセラーと言われるような本が出た後にその便乗本やらパロディ本が出て、オリジナルの著者や出版社との間にトラブル発生なんて話はよくあることだが、どうやらこの「性生活の悪知恵」に関してはそんな話もなかったようである。


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2008年10月01日

「実話雑誌」と昭和のピンク女優たち

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かつて三世新社(現在の東京三世社)という出版社が発行していた月刊誌「実話雑誌」は、季節風書店の「百万人のよる」や「世界裸か美画報」と並んで、昭和の高度経済成長期において、働くお父さん達にひたすら夢とロマンを与え続けた、いわば模範的なエロ雑誌だったようであるが、その「実話雑誌」の昭和40年7月号を最近入手した。実際、本号の頁を開いてみると、「アラン・ドロンの東京桃色日記・夜毎の情事に狂った二枚目スタードロンの周辺」とか「いたずらに悩む吉永の学生生活・スターの宿命に泣く大学生活三ヵ月目の小百合」といったような、いかにも時代を感じさせる芸能ネタから、今なら「週刊新潮」の「黒い報告書」が好んで取り上げそうな「(黒い事件)義父・母・娘!獣欲に狂ったスキャンダルの家」といった事件ネタまで「実話雑誌」の誌名に相応しい記事が盛り沢山に並んでいる。秘本や秘写真の広告もやたらと目につくが、面白いのは「子供も大きくなったので手もちの秘写真処分します<非営業>早勝!!」とか「父の遺品ゆずります。秘ぞう品とでも云うのでしょうか、私には一寸説明に困るような秘写真が色々あります、数に制限がありますのでお早くどうぞ。」といったように、一見もっともらしい口実を並べながらそれとなく注文を急かすようなものが多いところ。どの頁にも昭和の匂いが充満しているが、とりわけ巻頭グラビアには「ピンキー映画のスターたち」として、扇町京子、路加奈子、内田高子、香取環など最近ではまず目にすることのないような往年のピンク女優たちの写真が並んでいて興味を惹かれた。彼女たちの出演した映画をリアルタイムで観ることは出来なかったけれども、4人ともなぜか名前だけは心に引っ掛かっていた女優たちだったからである。ということで今回は、一応、↓にこの巻頭グラビアの4人の写真(上から扇町京子、路加奈子、内田高子、香取環の順)を紹介しておくことにしたい。
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2008年09月28日

射精同とカキマル

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日本における最古参のストリップ記者として、また舞台演出家として、戦後一貫してストリップの世界に身をおいてきた「ストリップの生き証人」、みのわひろお(箕輪弘夫)氏の「日本ストリップ50年史」(三一書房)という本を古書店で購入した。1999年に出た本なので、それ以後にデビューしたストリッパーに関する記述はないけれども、昭和22年に新宿「帝都座」5階の劇場で公演中の空気座で、女優の甲斐美晴が、大道具の額縁に入って、ヌード・ポーズをとった、いわゆる「額縁ショー」を皮切りに、桜樹ルイや愛田ルカといった元AVのアイドルたちが舞台で踊るようになった平成11年頃までの半世紀のストリップ史が様々なエピソードを交えながら簡潔にまとめられている点が嬉しい。巻頭グラビアには、まず「昔の名ストリッパーたち」として、R・テンプル、ジプシー・ローズ、奈良あけみ、メリー松原、メリー・ローズ、伊吹マリ、一条さゆり、雅麗華、阿修羅といった面々が、次に「現代のスター、アイドルたち」として、千堂あやか、入江マコ、御幸奈々、桜樹ルイ、夜羽エマ、桜樹桃香といった面々がそれぞれ写真入りで紹介されていて、これはストリップ・ファンにとってはちょっとしたお値打ちものであろう。 
さて、みのわ氏はこの本の中で「浅草駒太夫=おいらんショー」についても詳細に書いているが、実は私が1970年代後半(正確な年度は失念)に所用で大阪に出向いた際、立ち寄った東洋ショー劇場でたまたま上演中だったのがこの「浅草駒太夫=おいらんショー」だったこともあって、浅草駒太夫のところは読んでいて特に感慨深いものがあった。今でも印象に残っているのは、開演前に浅草駒太夫の夫である佐山淳氏が舞台挨拶の中でちょっとしたお笑いネタを披露した時のこと。話の詳しい内容は忘れてしまったが、とにかく学生運動をネタにしたもので、「これが本当の射精同(社青同)」とか「革マルというよりカキマル(マスをかくという意で)」といった駄洒落を連発、これが客席で大いに受けていたのである。今にして思えば、こういうネタがストリップ劇場でも大受けしてしまうあたりがまさに70年代という時代だったのであろう。 


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2008年09月25日

わくわくおっちゃんとジャズ・コンサート

 「わくわくおじさん日記」9月24日のエントリー「糞尿家
ロビンソン
http://blog.livedoor.jp/wakuwaku1776/archives/51269665.html
を読んで、ふと15年前のある日のことを思い
出してしまった。私が「糞尿家族ロビンソン」(この作品をレ
ンタルビデオ店で見付けた時には子供の頃よく観ていた「宇宙
家族ロビンソン」というTV番組を想起してしまったが)とい
う破天荒なスカトロ系AVの存在を知ったのは1993年、
「わくわくおじさん日記」の記事によるとこの作品がV&R
らリリースされたのは1990年ということなので、私が観た
のはそれから3年後ということになる。
 まあこのAVがいかにトンデモな作品であるかは「わくわく
おじさん日記」の当該記事を読んで頂ければ、すぐに納得でき
ると思うが、私の場合、特に強烈なインパクトを受けたのは、
作品の中でわくわくおっちゃん(わくわくおじさんとは全くの
別人なので誤解なきよう)と呼ばれている、ちょっと小林亜星
似の恰幅のいいおっさんが「ウンコ・ハンバーグ」(これが偽
装でないことは作品を見れば一目瞭然)を「うまい!」「これ
はもう大したもんだ」などと呟きながら見る見る平らげてしま
うところなのであった。
 さてこの作品を観てから数日後、私はジャズ好きの知人に誘
われて前売券を購入してあった大西順子さんというジャズピア
ニストのコンサートを聴くためにその知人と共に地元のコンサー
トホールに出向いたのであったが、驚くなかれ、公演開始前に
客が待機している喫煙室のような場所にあのわくわくおっちゃん
がいるではないか! 数人の仲間と一緒のようだったが、ハシャ
ギぶりのテンションの高さでひときわ目立っていた。私は迷わ
ずわくわくおっちゃんに近づいていき、「『糞尿家族ロビンソ
ン』観ましたよ。」と話しかけた。「よくわかったね」と最初
驚いた様子だったが、私が「僕、ファンなんですよ」と言うと、
すぐに相好を崩してこれからリリースされる作品のことなどを
いろいろと説明してくれた。席の位置が決まっていたので話を
したのは公演が始まる前の間だけで、公演が始まるとわくわく
おっちゃんは最前列で大西順子さんに花束を手渡したり、頻り
に歓声を上げたりしていた。元々、ジャズにそれほど深い関心
があったわけではないので、知人の強引とも言える誘いがなけ
れば、私がこのコンサートに行くことはまずなかったはずだっ
たが、おかげでわくわくおっちゃんと話ができたことは私にとっ
て大きな収穫だったと思っている。ちなみに私のこれまでの人
生でAV男優(?)と出会ったのはこの時だけである。



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2008年09月21日

「悪魔のはらわた」の映画パンフ

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前回、「ソドムの市」の映画パンフを実家にて発見したと書いたが、この時これと一緒に発見されたのが、「悪魔のはらわた」の映画パンフだった。ウド・キア扮するフランケンシュタイン博士が、筋金入りの臓物フェチ(美女の臓物を両手でこねくりまわしながら性的エクスタシーに達するシーンは圧巻)として登場するこの超トンデモ変態ホラーは、「ソドムの市」と共に私にとっては70年代半ばにおける忘れがたい作品の一つである。とりわけ面白く思ったのはフランケンシュタイン博士がただの臓物フェチというだけではなく、自らの理想とする人造人間を製造することで世界制覇を企てる一種のファシストでもあるという点。すなわち「ソドムの市」との共通点は、どちらも一応、ファシズムのパロディになり得ているところだろうか。 
 さて、今回久しぶりにパンフに目を通すと、映画評論家の林冬子氏が「この映画をみる女性のためのガイド」という興味深い一文を寄せているのが目に留まった。ここで林冬子氏は次のように書くことでこの映画が結構女性向きであることを強調している。 

 「エログロ趣味も同じじゃないですか。女はそんなものに興味をもつだけでお品がないとか、ハシタないとか、言うのは大体、女ではなく世の男性です。女は見たくて見たくて仕方ないけど、ぐっと我慢しちゃう。 
 女性のヌードに、女は興味をもたない、なんて言うのも、とんでもない誤解だし、まして男性のヌードなんていったら、ほんとは、目はぎんぎらです。 
 『悪魔のはらわた』は、そうした女の持つ潜在的な欲求不満を、ある意味で解消してくれるケッコーな映画でした。」  

 そしてこの映画の凄惨なラストシーンについては、あの懐かしい淀川長治氏の口調で、次のように絶賛(?)しているのであった。

 「最後に登場人物のほとんどが内臓ぐんにゃりの無残な死体の山となって片付いていくあたりは、小さなアングラ劇場で実演をみているようでしたね。美男の怪物に棒をつき刺された博士の内臓が、棒の先についたままとび出して、さながらエレクトした男性自身みたいな結末をむかえるというラスト、博士の子供たちが、宙吊りとなったわがアラン・ドロンくんをどう切りきざもうとしているのか、という暗示。こわいですね、でもどぎついラストでうれしかったですね。」     
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2008年09月18日

「ソドムの市」の映画パンフ

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先日、実家(今住んでいるところからさほど遠くない場所にある)に立ち寄り、探し物をしていたところ、イタリア映画監督ピエル・パオロ・パゾリーニの遺作「ソドムの市」の映画パンフを発見した。この映画は劇場公開時に映画館で観たのだが、なにしろ昔のことなので、その際映画パンフを購入したことなどすっかり忘れてしまっていたのである。内容はマルキ・ド・サドが書いた極悪非道の変態小説「ソドムの百二十日」を、サドが生きた18世紀末のフランスから、ムッソリーニのファシスト政権が支配する1940年代の北イタリアに舞台を移しかえて映画化したものであるが、多種多様な倒錯的セックスの見本市とも言うべき原作の持ち味は決して損なわれておらず、映画評論家・田山力哉氏のパンフの中の言葉を借りれば、「ピエル・パオロ・パゾリーニ監督自身の、内面にどろどろと流れる異様なるものの集大成」といった観を呈していた。そして何といっても映画の内容以上に世間を騒がせたのは、パゾリーニ監督がこの映画を撮り終えた直後に殺害され、その屍体がローマ南方アスティカ海岸近くのゴミ箱の中で発見されるという衝撃的な事件である。犯人として逮捕されたのは、パゾリーニとホモ関係にあったとされる17才の少年だったが、パゾリーニを嫌悪する右翼勢力による謀略殺人説も浮上、その後、事件の真相が明らかにされたのかどうかは寡聞にして知らない。まあこの映画のストーリーについては http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD11576/などに詳細があるので、興味のある向きはそちらを読まれることをお薦めするが、ここでは取り合えず、このパンフに掲載されている、仏国営テレビによって死の2日前に行なわれたという「パゾリーニ最後のインタビュー」を以下に紹介しておくことにしたい。

Q:あなたは「ソドムの市」が封切される時、再びスキャンダルを捲き起すことになると考えますか?

A:私は、スキャンダルを起すことは権利であり、スキャンダルにされることは快楽だと思います。それを拒むのはあまりにもモラリスト的過ぎます。

Q:性は政治的なものですか?

A:もちろんです。

Q:スカトロジー(糞尿趣味)は?

A:スカトロジーも同様です。政治的でないものはありません。

Q:カニバリズム(人肉嗜食)は?

A:ある環境において、それは現実の政治的行為であり、別の環境においては隠喩的な政治的行為です。

Q:政敵を片付けるのに最良の手段というわけですか?

A:私は最近、スウィフト流に2つの控え目な提案をしました。教授たちと、イタリア・テレビ演出家たちとを食ってしまうことを提案したのです。

Q:彼らは固くて消化に悪いですよ。

A:我々は頑丈な胃袋を持っていますから。

Q:あなたは今でもブルジョアおよびブルジョアジーに対する嫌悪感を持っていますか?

A:それは嫌悪感というものではないのですが・・・・・。残念ながら今ではそういう意識は捨てなければと思っています。なぜならイタリアでは国民全体がブルジョアになってしまったからです。

Q:すると、あなたの映画を成功させる人たちがブルジョアということになりますが、それはあなたを悲しませますか?

A:映画の成功を決めるのがブルジョアということにはなりません。成功させるのは、ブルジョア中のエリート、私もその一人ですが、彼らと一般大衆です。

Q:あなたはなぜ戦いをやめたのですか?

A:それはどういう意味ですか?

Q:あなたは、もはや政治的闘士とは思えないのですが・・・・・。

A:以前よりも戦い続けていますよ。政党に属してはいませんが、マルキシスト左派の一匹狼として、ますます闘争を強めています。

Q:あなたは詩人、小説家、脚本家、俳優、批評家、映画監督のうち、どう呼ばれるのが一番好きですか?

A:パスポートには単に作家と書いています。

Q:「ソドムの市」撮影の時、なぜ、あれほど隠密行動をとったのですか?

A:特にこの作品のとき、いままでとは違うさし迫った危険を感じたからです。

Q:それはどういうことですか?

A:スキャンダルにされる快楽を拒むであろうモラリストが現われることです。

Q:この作品であなたは、戦争中の傀儡共和国を舞台にしていますが、それはナチ占領下フランスのヴィシー政権に似ていますね。

A:そうです。完全にヴィシー政権に相当するものです。

Q:それはどこにあったのですか?

A:北イタリアで首都はサロでした。

Q:誰がその場所を選んだのですか?

A:ムソリーニ自身だと思います。もちろん、ナチスの圧力によるものでしょうが。

Q:その当時をデカダンスの時代だったと思いますか?

A:ヒトラー時代の終末的デカダンスではありましたが、西洋の資本主義の衰退を意味するものとは違います。

Q:「ソドムの市」では、百人ほどの若い男女があらゆるサディスティックな拷問を受けますが、そういう若者をどうやって集めたのですか?

A:他の映画と同様、数千人と面接して一番いいと思った若者たちを選びました。

Q:その俳優たちはマゾヒストですか?

A:私が選んだということは、そうだということです。
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2008年09月14日

世界発禁文学選書

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このところすっかり常連さんになってしまった「日本の古本屋」http://www.kosho.or.jp/servlet/topより注文しておいた「妖女ニノン」(ローバート・エステ著・清水正ニ郎訳)が届いた。8月30日の拙エントリー「伝説の出版社・浪速書房」http://yakenn2002.seesaa.net/article/105748113.htmlでは「世界秘密文学選書」という新書サイズのシリーズ本のことを取り上げたが、浪速書房にはこれとは別に「世界発禁文学選書」というこれまた面白いタイトルのシリーズ本があったことを「日本の古本屋」の古書検索サイトで発見、何冊かあった在庫の中で最もタイトルが気に入った「妖女ニノン」を購入することにしたのである。著者のローバート・エステという作家については全く知らなかったのであるが、この本の末尾の「本書について」という解説文を読むと、ナチスの時代に相当ひどい目にあった作家であることが窺われる。

 「本書は、ドイツがパリを占領していた、暗い時代に、チェッコ系のユダヤ人、ロバート・エステイムによって書かれた。 
 ニノンが自由を求める姿は、つまり、ナチスの圧制下にある、フランスの姿でもあった。 
 当然、ナチスの検閲官によるきびしい弾圧があり、エステ氏は逮捕された。 
 本の出版元は閉鎖され、出版社主は五年の重労働にされた。 
 そしてエステ氏はユダヤ人として収容所に送られた。 
 その先の消息を知る人はいないが、おそらく多くのユダヤ人と一緒に、ガス室にほうりこまれて、死んだことと想像される。 
 発禁が単なる発禁に止まらず、死をも意味した時代。 
 これは現代から遠い時代のことではないし、また、未来に全く無くなる事件でもない。 
 すべての出版人、文筆家はエステ氏の死の持つ意味を、今一度銘記すべきであろう。」(「本書について」より)

 なお、本の奥付を見ると、昭和42年発行となっているので、「世界秘密文学選書」より後に出たものであるようだ。おそらく「世界秘密文学選書」全巻発禁という事態に因んで「世界発禁文学選書」というタイトルにしたのであろう。いかにも浪速書房らしいタイトルセンスではある。そして本のカバー裏を見ると、やはり例によって「世界発禁文学選書趣意書」なる文章が載せられている。はてさてこの「趣意書」、ネタなのかマジなのか。「趣意書」本文は以下の通り。

芸術はその精神が純粋であればあるほど、あらゆるものと対立し摩擦をくり返してきた。特にその中でも、道徳・宗教・政治・などとは、特に相容れずに、激しい相剋を続けることが多かった。それは、結局、自由に生きんとする人間本来の希望と、それを規制し、一定の鋳型にはめんとする、権力組織との戦いともいえる。
 そしてこれは人類の歴史が始まって以来、数千年も、同じように続けられてきたものであり、現在も決して止むことのない、聖なる戦いである。 
 ここに、発禁文学選書を企画し出版しようとするに当り、再び我々は、自由と権力との問題に立ち入らざるを得ない、この現実を認識し、その企画により一層の慎重を期して、自戒の具となしながら、しかも自由を高らかに謳歌するため、敢てこの名を名付けた。 
 この一年、諸氏の机上に贈るこの文学に、我々は、終戦後日本人が初めて得て、今、また国家の意図により削られんとする人間尊重の精神のすべてを賭ける。 
 読者諸氏も挙って応援あられんことを伏してお願いする次第である。」
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2008年09月11日

カストリ新聞拾い読み

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前回のエントリーで取り上げた「カストリ新聞・昭和二十年代の世相と社会」(大空社)には現在ではその存在すらほとんど知られていない「カストリ新聞」なる珍奇で猥雑な新聞が多数収録されていて、この本が敗戦後の混迷した世相を証言する貴重な資料の一つであることは確かだが、やはり残念なのは記事本文に関して「判読に難あり」といえるものが圧倒的に多い点である。そんな次第で今回は判読可能な大見出しの部分を中心に特に興味を惹かれた箇所だけを拾い出してみることにする。 
 まず大見出しのグロさで群を抜いているのは本の初めに26号分が収録されている「実話新聞」である。「凄惨!!戀人の肉をムシャムシャ 血をグビグビ 惚れた女の肉は美味いと思い」「ニ代目阿部定 これは又女が女のものを切取って井戸に投込む」「冷蔵庫の中には戀人の肉塊 剥ぎ取った黒髪つきの皮をバサリわが頭に被り耳や舌を切り持歩く」「麗人を惨殺・その死体を愛撫」「白刃一閃!男性素っ飛ぶ 激しい愛ぶの真最中 出刃包丁でエイとチョン切る」など。 
 「実話タイムス」の「これが真相いまわ昔・あきれたものがたり軍国日本上海狂騒曲 裸美人に抱き着く参謀」は大平洋戦争末期における日本軍人の上海での醜行を暴露した記事。またこれと同じ紙面に8月13日の拙エントリーhttp://yakenn2002.seesaa.net/article/104658021.htmlで取り上げた画家ジョージ・グロスの作品が紹介されていて、それに「これは敗戦後のドイツの退廃と社会的ムジュンをえがき出したもので、そのまま、三十年後の現在の日本に通用するものではあるまいか。」といった論評が付されている。 
 「旬刊はいらいと」の「変態画伯の惨忍性 裸の美女を縛り逆さ吊り」では変態画伯の名前が××晴雨となっているが、これが緊縛画家・伊藤晴雨のことであるのは言うまでもないだろう。 
 「肉体藝術」の「女臀分析美学」(上に掲載した写真)では巨匠ルノアールの「女に乳房と臀の豊かさがなければ自分は女を描かないだろう」という言葉を引き合いに出しながら、女性の臀部の魅力が長々と論じられている。興味深い論考ではあるが、残念ながら印刷が劣悪なため断片的にしか読めなかった。
 「優性新聞」はさすが「滑稽新聞」で知られた宮武外骨が編集顧問となっているだけあって、紙面の片隅に「懸賞募集」と銘打って「『肉体の門』は何処でせうか? 最近『肉体の門』という言葉は一種の流行語であるが、然らば『肉体の門』は一体何処であるか、お答え下さい。正解者十名抽せんに依り左の賞金を呈します。」などという、いかにも外骨らしい、人を喰ったような広告が掲載されている。よく見ると、この広告の上には当時一世を風靡したといわれる映画「肉体の門」(田村泰次郎原作)の内容を紹介した記事が掲載されているのであった(爆!)。 
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2008年09月09日

焼跡のあだ花・カストリ新聞

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市の図書館で「カストリ新聞・昭和二十年代の世相と社会」(大空社)と題された大型本を借りた。終戦後の一時期、巷に氾濫したカストリ雑誌に関してはこれまで何冊かの研究書が出ているが、カストリ雑誌と同時期にカストリ新聞なるものが相次いで創刊されていたことは現在あまり知られていないのではなかろうか。
この本は敗戦後刊行された厖大なカストリ新聞の中から、当時の世相や風俗を照らし出していると思われるものを厳選し、紙面をそのまま収録したものである。巻頭にはこの本の監修を担当した新聞資料ライブラリー代表・羽島知之氏による「カストリ新聞の流行」と題する一文が載っているが、そこで羽島氏はカストリ新聞の魅力を次のように書いている。

「内容はエロ・グロをねらった興味本位の読みものがほとんどだが、どの紙面にもある種のエネルギーが漲っている。『真相ばくろ』『世相百態、猟奇、探訪、実話の楽しい新聞』『事実の奥の奥、嬉しく、悲しく、愉しい』『裏から覗く伝聞、真相の真相』『愛慾・怪奇・実話』『一流記者の実話探訪紙』『一度読み出したら手放せない、若い人にも老人にも親しまれる日本唯一の絶対的大衆娯楽版』『コント新聞はあなたの夢、わたしの笑、二人の心の底の桃源郷』『実話でびっくり、講談でしっぽり』『社会の照魔鏡』『総ての真相を知らせる新聞』など、題名脇などに短い編集方針を明記しているのがおもしろい。」(P2)

「紙面の大見出しに登場するカストリ新聞独特の新聞用語には、強姦、屍姦、輪姦、情交、桃色、愛撫、恥辱、淫獣、淫魔、淫奔、色魔、色慾、慾情、邪恋、快楽、不倫、嫉妬、猟奇、変態、愛慾、処女、転落、純潔、貞操、不貞、真っ裸、全裸殺人、乳房、陰毛、ズロース、売春、パンパン、毒婦、愚連隊、人妻狩、男娼などがあり、いずれも扇情的なことばで、読者を引きつけているのが特徴である。」(P3)

 因にこの本に収録されているカストリ新聞の紙名は「実話新聞」「探偵新聞」「大阪読物新聞」「New東京パック」「旬刊 猟奇新聞」「実話読物新聞」「実話タイムス」「旬刊新聞創世記」「夜の新聞」「旬刊新聞 青春街」「旬刊大阪」「旬刊 ハイライト」「ガイド」「世相新聞」「浮世新聞」「トピックジャーナル」「大衆読物新聞」「りべらるタイムス」「肉体芸術」「週刊珍聞」「新聞 大都会」「りべらる新聞」「真相新聞」「愛の世界」「花形新聞」「優性新聞」「週刊浅草街」「東京実話新聞」「実話クラブ」「ホーム・ニュース」「スリル」「特ダネ新聞」「新(ニュー)実話新聞」「東京読物新聞」「探偵実話読物」「旬刊探訪」「講談と実話新聞」「話題」「旬報」「コント新聞」「実話特急」「実話旬報」「風俗新聞」「実話新報」「オール花形ロマンス新聞」「週刊読物」「真相読物」「特シウ読物新聞」「夫婦生活新聞」「千一夜安全地帯」「東京ガイド」「性科学界機関誌」「新太陽」など。
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2008年09月07日

秘本「バルカン戦争」コレクション

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匿名作家ウイルヘルム・マイテルの「バルカン戦争」ほど「幻の秘本」という言葉がピッタリくる作品も珍しいだろう。原本はトルコ語で、1927年にドイツ語訳で出版されたのが始まりらしいが、日本では昭和3年(1928)に好色出版の帝王・梅原北明が文芸市場社からこの作品を出して以来、多くの訳本が世に出たが、そのほとんどが発禁処分をくらっているのである。物語は1912年に勃発したバルカン戦争を背景に、男達が戦場へ向かった後に繰り広げられる婦人たちの様々な愛欲風景(近親相姦、同性愛、集団性交、獣姦など)を露骨に描いたもので、それはさながら性戯のオンパレードといった様相を呈している。この作品を戦争に名を借りた単なる淫蕩の書と見るか、発禁本研究の泰斗・城市郎氏のように「一種異様な反戦小説」と見るかは読む人によって評価が分かれるところであろうが、いずれにしてもこういう作品が官憲から歓迎されないことだけは確かなようである。それでは参考までに、浪速書房版「バルカン戦争」(佐々木尚・訳)から訳者序文を以下に紹介しておくことにする。

 「いまは、核戦争の発火点は中東ではないかといわれている。ところがかつてはその中東とは目と鼻の先のバルカンがよく、戦争の発火点といわれていた。 
 事実、古来からこの地方には戦争が絶えたことがない。有史以前のアレクサンドル大帝の討伐に始まり、第一次欧州大戦の原因となったセルビア皇太子暗殺事件までの約ニ千年の間、この地方が平穏であった時代はほとんどなかったといえよう。 
 それは、日本よりも小さいこのバルカン半島に、アルバニア、トルコ、ボスニア、ルーマニアといった十近くもの小国がひしめきあい、多種多様の民族が雑居する上に、地理的にはアジアヨーロッパの接点であるといったところからの民族性の衝突、利権のからみといった、争いが起こるべきあらゆる条件をかね備えていたからである。
 とはいえ、戦争はどういう時代のどんな戦争でも、人類の行為のなかでもっとも大きな愚昧行為である。そのために、どれだけの人びとが死に、略奪され ー 女は暴行されてきたことか・・・。 
 この物語はそうした異常環境のなかで生まれた。したがって必然、そこに描かれた世界もまた異常をきわめている。 
 それゆえに本書はすでにもう数回となく刊行がこころみられながら、日本ではまだ一度もまともな日の目を見たことがない。 
 それはおそらく、戦争否定論としての本書の一方の意図が故意に見落とされ、純然たる軟派文献と見做されてきたからである。しかしそれは、究極のところ過去の時代にはよくありがちな偏見でしかありえなかった。 
 なぜならばいま、事の正否を見きわめるにこれ以上の慧眼はない『時の流れ』という偉大な事象が、本書の登場に何ら抵抗のない時代を与え、本書は堂々と日の目を見ることができているからである。」
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