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サブカル雑食手帳

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2009年03月19日

貸本漫画から「堕靡泥(ダビデ)の星 」まで

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2004年に亡くなった漫画家佐藤まさあき氏の自伝本「『劇画の星』をめざして―誰も書かなかった<劇画内幕史>」(文藝春秋)を市の図書館で借りて読んだ。小学生の頃、近所の小さな貸本屋で借りて読んだ「黒い傷痕の男」(本書によるとこのタイトルは当時流行っていた「黒い傷痕のブルース」から拝借したものであるとか)や「影男」といったハードボイルド漫画から、後に代表作となった「堕靡泥(ダビデ)の星」(中学生の頃にアウシュビッツの写真に魅せられたサディストを主人公にした超変態漫画)まで、氏の作品は数多く読んできた方だが、その中のどの作品もこの自伝本の面白さには遠く及ばないような気がした。 サブタイトルに<劇画内幕史>とあるが、業界内部の出来事だけに留まらず、作品が描かれたその時々の時代背景が詳細に記録されているため、日本の戦後史として読むことも可能である。例えば、昭和44年〜45年にかけての主な出来事については、マネージャーの日記からの抜き書きという形で記録されており、 昭和44年10月21日(国際反戦デー)の日記には、「学生と機動隊が衝突し、楳図(楳図かずお)のマンションのベランダから見物する。真下で火炎瓶を投げたり、殴り合いをしたり、なかなか迫力があった。」などと書かれていたりする。 
 氏と交流があった、さいとうたかを、辰巳ヨシヒロ、水木しげる、楳図かずお、つげ義春、松森正、うめもとさちを、白土三平など漫画界のビッグネームたちに関するエピソードもそれぞれ面白いが、やはり何といっても奇人ぶりではつげ義春がダントツである。
  氏はこの本の中で自らの没落ぶりについても赤裸々に語っている。戦災孤児から筆一本で貸本漫画界の寵児にのし上がり、全盛期には、家の中に滝がある豪邸を建てるほど稼いでいたにも拘らず、「ネアカ」ブームといわれた1980年代に入ると注文が激減、さらには劇画喫茶「劇画館」の経営にも失敗して無一文の身となってしまう。自らの波瀾に満ちた実人生を振り返りながら、氏は次のように書いている。

 「私にとっても、このころは家庭も仕事も絶頂のころである。だが、妻に去られ、生きる目的すら失った主人公の虚無感がヒシヒシと分かるのだ。私がこの虚無感を、実際問題としてより感じ取るには、数年後に新宿に建てたパブレストランを潰し、妻とも別れ、金をいっさい失って無一文になったときまで待たなければならない。 
 それをどうして、この時点で主人公を分身のように理解することが出来たのか。 
 ひょっとすると、私は不幸が好きなのかもしれない。不幸の持つなんとも云えないストイシズムが好きなのではないか。そして、知らず知らずに、劇画という形で描いた作中の人物の運命を自分の方に近づけていってるのではないか。ふと、そんなことを思うのである。」

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posted by 下等遊民 at 20:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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