
「彼から安楽死を考えていると打ち明けられたのは、私がアマゾンで女性用バイブレーターのカスタマーレビューを読んでいる時だった。」という衝撃的(?)な書き出しに惹かれて、社会学者の古市憲寿氏の初小説で第160回芥川賞の候補作でもある「平成くん、さようなら」(文藝春秋)を昨日から読み始めた。まあこの程度の文章を「衝撃的」などと感じること自体、当方の感性がバリバリ昭和おやじ的なものである証しなのかも知れんが、それはさておき、この作品、とにかく女性用バイブレーターに関する記述がやたらと多く、「性行為を嫌う彼のせいで、私には定期的に女性用のセックストイを買う習慣がある。ベッドルームには、イロハ、スヴァコム、ストロングトルネードなど、数十のローターやバイブレーターが並べられていた。最近のお気に入りはウーマナイザーだ。」といったように、女性用アダルトグッズの具体的な商品名も次々飛び出し、その方面における古市氏の造詣の深さも窺われる(さすが気鋭の社会学者!)。これまでの芥川賞候補作の中でこれほど女性用アダルトグッズのことが詳細に書かれた作品はなかったんじゃないか、などと思いながらついつい好奇心からアマゾンでイロハ、スヴァコム、ストロングトルネードといった商品名を検索。驚くなかれカスタマーレビューの中には「ちゃんと濡れていないと、ひだの所がこすれて痛いかな。クリの方も当たり方によってはちょっと痛い。でも動きはエロくてヤバいです。」といったように既に「批評」の域に達しているものまであってすっかり関心が横道にそれてしまいました。といったところで本年もよろしくお願い申しあげます。