右翼団体の圧力による各地での上映中止騒動が、かえって素晴らしい宣伝効果を生み、上映館はどこも大盛況だったといわれるドキュメンタリー映画「靖国YASUKUNI」(リ・イン監督)だが、実は私の地元(といっても市内ではない)でも今月の半ばにやっと上映される運びとなった(但し映画館ではなく市民ホールのような所)ため、遅ればせながらなんとか観ることが出来た。会場はほぼ満席に近く、見たところ、20才前後くらいの若者から70才前後の年配者まで観客の年齢層が広いのにまず驚いた。最も印象的だったのは、上映中に何度も観客の間に爆笑の渦が巻き起こったことである。もちろん私も一緒になって大いに笑った。「私は、靖国神社の中に残る<戦争後遺症>を通して、人類にとって永遠のテーゼでもある<戦争と平和>とは何なのかを、十年もの歳月をかけて追いかけてきた。 その問いかけにはそれぞれの観客の心の中の<靖国>を通じて考えてもらいたい。」といったリ・イン監督の言葉を額面通り受け取れば、これほど笑いと無縁の映画もないはずである。ならばこの笑いの正体とは一体何だったのか。 会場で購入した「靖国YASUKUNI」のパンフレットに後で目を通すと、「『靖国』に寄せられた声」として、各界の著名人から寄せられたコメントが載っていた。その中にあった、柳下毅一郎氏(映画評論家・特殊翻訳家)の「靖国に集うコスプレ右翼の姿を捉えた本作こそ日本純正のモンド映画だ!」というコメントを読んだ時、やっと笑いの正体がわかった気がした。そう、まさしくこれは靖国という現代の秘境に潜入し、そこに跋扈する魑魅魍魎の異様さをこれでもかとばかり見せつけてくれる一種のモンド映画なのだ。モンド映画とは、ヤコペッティの「世界残酷物語」(62)に端を発する猟奇的かつ悪趣味なドキュメンタリー映画のことで、ウィキペディアには「世界各地の秘境の奇習や大都会の夜の風俗、事故や処刑の瞬間など衝撃映像を、虚実取り混ぜて見世物感覚で構成したドキュメンタリー風映画を指す。スタンスは好奇心や見世物感覚であったが、映画の最後には、とってつけたように『世界の残酷な現実をあえて明らかにする』『動物たちを大切にしなければならない』『狂っているのは野蛮人ではなく文明人のほうである』などといった社会派的な結論がついていた。」と説明されている。だとすれば、旧日本軍の姿に身をやつしたコスプレ右翼たちが、入れ替わり立ち替わりこの神社に訪れる光景を「食人族」の群れでも観るごとく、見世物感覚で大笑いしながら観賞することこそがこの映画に最も相応しい観賞法といえるのかも知れない。
なおモンド映画については、「わくわくおじさん日記」のエントリーを参考にさせて頂きました。
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【日記の最新記事】


大東亜戦争の「象徴」としての「靖国」は、コスプレ右翼の聖地のようなものだったんですな(見る人によっては)
ま〜コスプレした街宣車乗ってるような右翼は、某著名作家のように割腹自殺はできますまい。
実はこの映画を観ている間中、この映画の作風にある種の既視感のようなものをずっと感じてはいたものの、それが何なのか明瞭に思い出せなかったのです。それが後でパンフレットにあった柳下毅一郎氏のモンド映画という言葉を読んだ時、「ああまさにあの世界だったんだ」と妙に納得しちゃったわけなんです。「世界残酷物語」とか「地球の皮をはぐ」とか、「世界を裸にする」とか、まさにああいった世界に通じる匂い。非常にシリアスなところもあるのですが、日本軍による100人斬りに関するシーンのBGMに「抜刀隊の歌」が流れたり、かなりキワモノ的でもあります。これもちろん褒め言葉ですが。
モンド映画といえば確かに「靖国」の煽り文句は「ついに暴かれる〜」とかモンド系のそれだったかと思います。
戦没者遺族が高齢になってコスプレ右翼だけが幅を利かしてるいまがモンド的には食べ頃の靖国神社だったんでしょうね。
この調子だと天皇の参拝は当分ありえそうにないですな。
>靖国」の煽り文句は「ついに暴かれる〜」とかモンド系のそれだった
そうだったすね! 大事な点を見落としてました。まず、いかにも観客の見世物的好奇心を煽るようなキャッチコピーこそはモンド系の身上でもあるわけで。
>戦没者遺族が高齢になってコスプレ右翼だけが幅を利かしてるいまがモンド的には食べ頃の靖国神社
1960年代にあれほど隆盛を誇ったモンド映画が廃れてしまった一因には、情報化が進んだ結果、観客の好奇心を煽るような「秘境」の存在が見付けにくくなってしまったということもあるんでしょうね。そこでコスプレ右翼の溜まり場である「靖国」を世界最後の「秘境」に仕立て上げ、めでたく21世紀にモンド映画を甦らせることに成功したって感じですな(爆!)
土地柄のせいでしょうか、札幌の劇場では笑いはありませんでしたが、食事ラッパには驚きました。南方では胃腸薬が欠かせなかったかもしれませんね。
『コスプレ右翼』、確かに異様な雰囲気を漂わせていました。ある意味あそこまでなりきれることに感動を覚えました。
この映画の笑いの正体=モンド映画に、にゃるほど!でした!