
先日、実家(今住んでいるところからさほど遠くない場所にある)に立ち寄り、探し物をしていたところ、イタリアの映画監督ピエル・パオロ・パゾリーニの遺作「ソドムの市」の映画パンフを発見した。この映画は劇場公開時に映画館で観たのだが、なにしろ昔のことなので、その際映画パンフを購入したことなどすっかり忘れてしまっていたのである。内容はマルキ・ド・サドが書いた極悪非道の変態小説「ソドムの百二十日」を、サドが生きた18世紀末のフランスから、ムッソリーニのファシスト政権が支配する1940年代の北イタリアに舞台を移しかえて映画化したものであるが、多種多様な倒錯的セックスの見本市とも言うべき原作の持ち味は決して損なわれておらず、映画評論家・田山力哉氏のパンフの中の言葉を借りれば、「ピエル・パオロ・パゾリーニ監督自身の、内面にどろどろと流れる異様なるものの集大成」といった観を呈していた。そして何といっても映画の内容以上に世間を騒がせたのは、パゾリーニ監督がこの映画を撮り終えた直後に殺害され、その屍体がローマ南方アスティカ海岸近くのゴミ箱の中で発見されるという衝撃的な事件である。犯人として逮捕されたのは、パゾリーニとホモ関係にあったとされる17才の少年だったが、パゾリーニを嫌悪する右翼勢力による謀略殺人説も浮上、その後、事件の真相が明らかにされたのかどうかは寡聞にして知らない。まあこの映画のストーリーについては http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD11576/などに詳細があるので、興味のある向きはそちらを読まれることをお薦めするが、ここでは取り合えず、このパンフに掲載されている、仏国営テレビによって死の2日前に行なわれたという「パゾリーニ最後のインタビュー」を以下に紹介しておくことにしたい。
Q:あなたは「ソドムの市」が封切される時、再びスキャンダルを捲き起すことになると考えますか?
A:私は、スキャンダルを起すことは権利であり、スキャンダルにされることは快楽だと思います。それを拒むのはあまりにもモラリスト的過ぎます。
Q:性は政治的なものですか?
A:もちろんです。
Q:スカトロジー(糞尿趣味)は?
A:スカトロジーも同様です。政治的でないものはありません。
Q:カニバリズム(人肉嗜食)は?
A:ある環境において、それは現実の政治的行為であり、別の環境においては隠喩的な政治的行為です。
Q:政敵を片付けるのに最良の手段というわけですか?
A:私は最近、スウィフト流に2つの控え目な提案をしました。教授たちと、イタリア・テレビ演出家たちとを食ってしまうことを提案したのです。
Q:彼らは固くて消化に悪いですよ。
A:我々は頑丈な胃袋を持っていますから。
Q:あなたは今でもブルジョアおよびブルジョアジーに対する嫌悪感を持っていますか?
A:それは嫌悪感というものではないのですが・・・・・。残念ながら今ではそういう意識は捨てなければと思っています。なぜならイタリアでは国民全体がブルジョアになってしまったからです。
Q:すると、あなたの映画を成功させる人たちがブルジョアということになりますが、それはあなたを悲しませますか?
A:映画の成功を決めるのがブルジョアということにはなりません。成功させるのは、ブルジョア中のエリート、私もその一人ですが、彼らと一般大衆です。
Q:あなたはなぜ戦いをやめたのですか?
A:それはどういう意味ですか?
Q:あなたは、もはや政治的闘士とは思えないのですが・・・・・。
A:以前よりも戦い続けていますよ。政党に属してはいませんが、マルキシスト左派の一匹狼として、ますます闘争を強めています。
Q:あなたは詩人、小説家、脚本家、俳優、批評家、映画監督のうち、どう呼ばれるのが一番好きですか?
A:パスポートには単に作家と書いています。
Q:「ソドムの市」撮影の時、なぜ、あれほど隠密行動をとったのですか?
A:特にこの作品のとき、いままでとは違うさし迫った危険を感じたからです。
Q:それはどういうことですか?
A:スキャンダルにされる快楽を拒むであろうモラリストが現われることです。
Q:この作品であなたは、戦争中の傀儡共和国を舞台にしていますが、それはナチ占領下フランスのヴィシー政権に似ていますね。
A:そうです。完全にヴィシー政権に相当するものです。
Q:それはどこにあったのですか?
A:北イタリアで首都はサロでした。
Q:誰がその場所を選んだのですか?
A:ムソリーニ自身だと思います。もちろん、ナチスの圧力によるものでしょうが。
Q:その当時をデカダンスの時代だったと思いますか?
A:ヒトラー時代の終末的デカダンスではありましたが、西洋の資本主義の衰退を意味するものとは違います。
Q:「ソドムの市」では、百人ほどの若い男女があらゆるサディスティックな拷問を受けますが、そういう若者をどうやって集めたのですか?
A:他の映画と同様、数千人と面接して一番いいと思った若者たちを選びました。
Q:その俳優たちはマゾヒストですか?
A:私が選んだということは、そうだということです。


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僕もくだらないブログかいてますが・・・
またみにきまぁす(^^)
ちなみに、パゾリーニは小説家としてもA・モラヴィア(個人的に好きな作家ですが)に続く鬼才としての評価を得ていたようです。
この「ソドムの市」は一部がYoutubeにUPされています。
http://jp.youtube.com/watch?v=lT8ko1ENiiw&feature=related
(本当にやばいシーンはありませんが)
>70年代のあの時代にこんな映画が公開されたこと自体が凄い事だった
「ソドムの市」が日本で公開された1976年は「愛のコリーダ」とか「O嬢の物語」なども公開されたこともあって、映画界にとってはある意味画期的な年だったと思います。けだし、この3本の映画に共通するのは、性の明るい面よりもむしろ暗黒面の方をこそ中心的なテーマに据えていたという点ではないでしょうか。確かに「ソドムの市」という映画には、それ以前のパゾリーニ映画に濃厚に漂っていた芸術的香りは微塵もなく、その点を捉えて、「ソドムの市」をパゾリーニの感性的退化の表れと見るピント外れの評論家もいたようですが、これはとんでもない話で「ソドムの市」こそはパゾリーニが本当の自分をさらけ出すことに成功したパゾリーニ映画の最高傑作だと思います。なおYoutubeで一部公開されていたことは全く知らなかったので、貴重な情報に感謝します。それにしてもYoutubeというのはまさにお宝箱ですよね〜。