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サブカル雑食手帳

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2008年10月28日

権力とサディズム

 「『退屈の犯罪』は『余暇のある階級』の増加とともにふえ
る。歴史の中で最も悪名高い変質者は、暇をもてあました男た
ち ー ジル・ド・レス、イワン雷帝、そしてサド自身である。
ドストエフスキーは、ニコラス・スタブローギンによって退屈
と犯罪の関係を示そうとこころみた。貧乏の犯罪は、何ものも
明らかにしないが、退屈の犯罪は人間の自由意志と密接な関係
がある。」(コリン・ウィルソン「殺人百科」より)

 西洋史及び東洋史の上で、その性向の異常さと残酷さで際立っ
ていた権力者たちのエピソードを「淫虐のローマ皇帝たち」と
「ドS天皇・武烈」の二つのエントリーで取り上げてみたが、
こうしたサディスト的権力者たちの事例を見るにつけ、あらた
めて思い知らされるのは政治的権力と性的サディズムとの親近
性という問題である。西洋文学の中でこの問題をもっとも深く
追求した作家として思い出されるのはやはり18世紀フランス
のマルキ・ド・サドであろう。サドの作品にはしばしばサディ
ズムの権化のような権力者が登場するが、そこで彼らは必ずと
いっていいほど自らの信奉する悪徳とサディズムの哲学を披瀝
し、権力とサディズムとの密接な繋がりを明らかにしてくれる
のである。ここではサドの作品中、「悪徳の栄え」(澁澤龍彦
訳・河出文庫)に登場する政治家サン・フォン及び「ソドムの
百二十日」(大場正史訳・新流社世界セクシー文学全集)に登
場する徴税請負人デュルセの快楽論を権力とサディズムの問題
に光を当てたものとして取り上げておくことにしよう。

 「人間のもっとも根源的な、もっとも激しい傾向は、その同
類を鎖で縛りつけ、あらゆる暴力でこれを圧迫することにきまっ
ている。乳母の乳房を噛み、暇さえあれば玩具を壊そうとする
幼児の例が、破壊と悪と圧迫こそ、自然がわしらの心の中に刻
みつけた最初の傾向であることを明かにしてくれる。わしらは
それぞれに賦与された感受性の程度に応じて、多かれ少なかれ
暴力的に、この傾向にふけっているのだ。したがって、人間の
気に入るすべての快楽、人間の味わいうるすべての悦楽、人間
の情欲を最高度に楽しませるすべてのものが、他人を苦しめる
ことのできる専制主義のなかに本質的に存立していることは明
らかである。」(「悪徳の栄え」より)

「幸福というものは欲望の成就にあるのではなく、人の欲望を
はばむ障害物を乗りこえるところにある。なんでも手にはいる、
現在のわれわれの幸福には、ひとつ根本的なものが不足してい
る。つまり、比較対照するという快楽が欠けている。快楽はみ
じめな人びとを眺めるところから生じる。だから、人間が平等
で、差別がなかったら、幸福もまた存在しない。
 また、快楽はみじめな人びとを救えば、存在しなくなる。人
の不幸を増大するという悪事を働くときに、性的な興奮を感じ、
快楽の刺激に必要なものを発見する」(「ソドムの百二十日」
より)







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posted by 下等遊民 at 20:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サドの作品が「文学」として評価される理由のひとつが、サディズムに対する「哲学」だと思うのですが、それがサドの作品を読みにくくしている(澁澤版は特に)原因のように思います。「悪徳の栄え」と「美徳の不幸」は高校生の頃に読んだのですが、難解な印象を受けた記憶があります。
30数年振りに再読しようかとも思うのですが、たぶん途中で挫折すると思います。
Posted by wakuwaku1776 at 2008年10月28日 22:22
 >wakuwaku1776様

 >「悪徳の栄え」と「美徳の不幸」は高校生の頃に読んだのですが、難解な印象を受けた記憶があります。

 確かにサドの作品はどれも好色文学として読むにはあまりに理屈っぽいものばかりですよね。新しい登場人物が現れる度に延々何頁にも亘る哲学(?)論議に付き合わなければならず、しかもそのすべてがこれまたウンザリするほど同工異曲のものばかりときているわけで。やはりサドの作品は余程「暇をもてあました」時でなければ再読できないような気がします。

 
Posted by 下等遊民 at 2008年10月29日 01:19
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