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サブカル雑食手帳

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2009年12月20日

「裏窓」誌の孤軍奮闘

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 「同じような婦人団体は、『悪書』を置く小売り書店を発見すると、押しかけていって店主をつかまえ、弾劾した。私はその現場をみたわけではないが、新聞記事で何度か読んだ。社会面のトップに写真つきで掲載されていた。『進歩的』と一般に思われているその新聞社が『悪書追放』のキャンペーンを張っていた。多くの人がそのキャンペーンにあおりたてられ、同調している。私はいまのマス・メディアが(とくにテレビが)戦争参加のキャンペーンを張れば、多くの人はそれに同調し、平和憲法なんかアッというまに雲散霧消すると思っている。」−濡木痴夢男著「『奇譚クラブ』とその周辺」(河出文庫)よりー

 東京三世社から隔月刊で発行されている「耽美小説」誌の最新号(2010年1月号)を購入した。「艶本懐古」という頁で紹介されている「裏窓」という雑誌の妖美なる表紙絵に魅了されたからである。「裏窓」誌といえば、その昭和37年8月号が、「『わいせつ文書』の疑いで摘発」という前科(?)もある当時は札付きの「悪書」。この当時、「裏窓」の編集に携わっていた濡木痴夢男氏の著書「『奇譚クラブ』とその周辺」(河出文庫)によると、この時、桜田門へ呼び出された氏に対して、取り調べ官はまず次のように語ったという。

 「この赤い紙でしるしのついているところを見なさい。これは日本の青少年の将来を心配する地位も学問もある立派な人たちが、この雑誌を読んで、みなさんで相談し議論し合った結果、一冊の中にここはよくないと判断されたページが、これだけあるんです」

ちなみにこの著書の中で、濡木氏は「裏窓」誌・昭和39年10月号に掲載された「現代の魔女裁判」と題する、当時のヒステリックな悪書追放運動への異議申し立てとして読者が投稿してきた長大な論文を全文紹介しているが、その中にこんな文章があるのを発見した。

 「彼らがいうところの悪書とは、本当は、青少年を毒するというエロ本より、真に心底より彼らを人間としての自覚に立ってあるがままの真実を見きわめる批判力をもった人間として誕生させる、本当はそういう良書をこそ、言うのである。」

 「裏窓」誌が、「そういう良書」であったかどうかはともかく、「地位も学問もある立派な人たち」(爆!)から嫌われる雑誌であったことだけは確かだろう。

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posted by 下等遊民 at 08:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>これは日本の青少年の将来を心配する地位も学問もある立派な人たちが

なるほど〜、そういう理屈だったんですね。
それにしても、「地位も学問もある人」が「立派な人」である確率がいかほどかは考える必要のない時代だったんでしょうね。
「地位も学問もある立派な人」に初期の頭脳警察あたりを聞かせたいもんであります。
Posted by wakuwaku1776 at 2009年12月21日 21:04
 >wakuwaku1776様

 >「地位も学問もある人」が「立派な人」である確率がいかほどかは考える必要のない時代

 ある本を「悪書」と決めつける絶対的な根拠がない以上、取り調べ官としては何らかの権威を持ち出して自分のやっていることを正当化するしかなかったということはわかるんですが、その権威というのが、「地位も学問もある立派な人たち」(爆!)であるところがいかにも時代を感じさせますよね〜。こういう場合に取り調べ官が持ち出したがる権威というのも当然、時代とともに変化していくのではないでしょうかね。今の取り調べ官だったらどういう言い方をするのか、ちょっと興味深いものがあります。
Posted by 下等遊民 at 2009年12月22日 00:55
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