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サブカル雑食手帳

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2009年12月26日

エロティシズム最深部に向って退却せよ!

今年の5月19日、思想家の太田竜氏が腹膜炎のため死去した(享年78)。
太田竜氏といえば、1960年代は新左翼運動の教祖的存在(第四インターナショナル日本支部及びプロレタリア軍団を創設)、1970年代初めはアイヌ解放論者、1980年代以後はエコロジストとして動物実験反対や自然食(マクロビオティック)に傾斜、さらにその後は反米、反ユダヤ主義、反国際金融資本を唱える右翼国粋主義者に変貌(この頃は太田龍と名乗っていたようだが)といったように、戦後の思想家の中でもひときわ紆余曲折に満ちた人生を歩んだ人物である。氏の著作については、確か1980年代半ば頃に出た動物実験反対の書「声なき犠牲者たち」(現代書館)を読んだのが最後だったせいか、氏の訃報に接するまでは太田竜という名前すらほとんど忘れかけていたのだが、今回、1970年代に氏が時代の寵児であったことを示すあるエピソードを思い出したので取り合えず書いておきたい。それは1970年代も終わりに近くなった頃だったと記憶するが、当時はエロ本自販機が大ブームでアリス出版とかエルシー企画といった自販機専門のエロ本出版社が脚光を浴びていた。この時代、こうした自販機エロ本の表紙に書かれたキャッチコピーにはなかなか気が利いたものが多かったため、私はエロ本自販機の前を通り過ぎる際、なるべく表紙のキャッチコピーだけはチェックするようにしていたのである。秀逸なキャッチコピーにどんなものがあったのか、今ではほとんど思い出せないが、一つだけ今なお鮮明に記憶しているのが、「エロティシズム最深部に向って退却せよ!」というもの。このキャッチコピーが太田竜氏の著書「辺境最深部に向って退却せよ!」(三一書房)や「再び、辺境最深部に向って退却せよ!」(話の特集)のパロディであることが一目瞭然だったからである。エロ本のキャッチコピーにまで影響を与えた太田竜氏が凄かったというべきか、それともこんなキャッチコピーを思いついたエロ本編集者が凄かったというべきか、いまだに私にはよくわからないのだが・・・・・。

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posted by 下等遊民 at 21:16| Comment(4) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「矛盾語法」というレトリックなのかしら。「辺境最深部に向かって退却する」というのは。
 辺境とか最深部は、自分が今いるところではないし、そもそも遠いところ。そこへ退却するのは変で、かりにそれが撞着でないとすれば、発話者自らは「辺境よりかつて来る」者か、「最深部を故郷とする」者か。
 でも、そうであったとしても、自分が「辺境最深部」に根ざすものであることは自覚されていない。「辺境最深部」という言葉は、自らから遠いことを示すものとして効果をあげているのだから。
 自明に遠い「辺境最深部」が、しかし己の「退却すべき」場所だというのは、閉塞と高揚のないまぜになった大学闘争世代らしいな、と思いました。
 そして…、エロティシズム、イズムをつけずに「エロス」でも「エロ」でもいいですが、「エロ」がいかに自分の根源であり、かつまた「辺境」のように遠いところのものであるのかも、わりと自然に発想されるのかもしれません。
Posted by kuroneko at 2009年12月27日 01:29
 >kuroneko様

 「辺境最深部に向って退却せよ!」というタイトルが実は矛盾語法を使ったレトリックであるとは全く気づかなかったんですが、どんな場合であれ「退却する」のはかつて自分が居た場所であることを思えば、確かに矛盾語法と言えますよね。ただ「辺境最深部」なら「前進せよ!」の方が明らかに相応しいところを敢えて「退却せよ!」とした点にこそ、新左翼時代から「進歩史観」嫌いだった太田竜という人の思想的特質が表われているような気もします。

 >「エロ」がいかに自分の根源であり、かつまた「辺境」のように遠いところのものであるのかも、わりと自然に発想されるのかもしれません。

 本のキャッチコピーというのは、たとえそれがエロ本のものであってもその時代の空気を映し出す鏡と言えるんじゃないでしょうかね。このキャッチコピーを思いついた編集者にとって「辺境最深部」としてのエロとは、「政治の季節」から遠く隔たった「性の季節」を意味するものなのか、あるいは正規の出版ルートからはみ出した自販機というトポスを意味するものなのか、はたまたフロイドのいう「幼児的退行としてのエロス」を意味するのか、勝手にいろいろ憶測してみるのも面白いかも。


 
Posted by 下等遊民 at 2009年12月27日 09:28
 「自販機エロ本」!、あの時代には田舎にもそこそこ存在していましたね。(2〜3回買った覚えが・・・)
最初は、そのまま売ってましたが、PTAやら何かからクレームが付き、日中は目隠ししてあり、夜だけ販売という末路をたどった覚えがあります。ビニ本と一緒で、表紙とタイトルだけで判断する訳ですから、ま〜「当てもの」みたいな魅力がありましたね。
Posted by wakuwaku1776 at 2009年12月27日 18:35
 >wakuwaku1776様

 自販機エロ本の時代ってどのくらい続いたんですかね。正確には思い出せないんですが、全盛期は1970年代末の2〜3年ほどだったような気もします。キャッチコピーにやたらとスローガンっぽいものが多かったりして既成のエロ本とは一味違った匂いがあったことは確かでしょうね。写真集とエロ劇画誌があってエロ劇画誌ではアリス出版の「劇画アリス」が面白かった。今は書評家としてそこそこ売れている亀和田武氏が編集長で、毎号「執着」と題された編集長のエロ大好き宣言みたいな文章をのっけてましたっけ。ちなみに谷村新司が所属していたアリスってグループ名はアリス出版のアリスから取ったという話を聞いたことがあります。
Posted by 下等遊民 at 2009年12月28日 01:13
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