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サブカル雑食手帳

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2010年09月09日

映画「キャタピラー」 を観てきた

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 先週末、映画「キャタピラー」を観てきた。この映画が戦地で四肢を失った傷痍軍人とその妻によって演じられるどろどろの愛憎劇を通して戦争の愚劣さを描き出した超ド級の反戦映画であり、妻役の寺島しのぶ、夫役の大西信満の演技が素晴らしかったことはあらためて言うまでもないことだが、この映画の魅力を語る上でどうしても外せない存在がゲージツ家・KUМA演じるところの「どのジダイにも是非いて欲しいバカ男」である。映画パンフの若松孝二インタビューによると、この一見エキセントリックな徴兵忌避者は若松監督が子どもの頃に身近に実在していた人物がモデルになっているとのこと。この人物について若松監督はインタビューで次のように語っている。

 「戦時中、僕の地元にもいたんですよ。いつも赤い襦袢を着て、おかしな言動をしている人が。なんだか良くわからないけれど、子ども心に、なんか変な人だと思っていた。大人たちなんて、平気で『あいつは頭がおかしいから、近づくな』なんて言ってね。でも、終戦後、その人は普通の服着て野良仕事をしていたんですよ。
 後になって考えると、彼は本当の意味で戦争に反対していた人だったんじゃないか、と。人を殺すのも殺されるのもイヤだから、バカなふりをして徴兵逃れをしていたんじゃないか。自分でイヤなものはイヤだと言う、流れに逆らう、それができる人こそ、一番勇気のある人じゃないですか。」 

 まったくその通りだと思う。「良心的兵役拒否」という言葉があるが、はっきり言って私はこの言葉が嫌いである。「良心的」であろうがなかろうが、兵役を拒否することはそれ自体として文句なしに素晴らしいことだと思っているからである。
 では最後に映画「キャタピラー」のエンディング曲として使われた、元ちとせの「死んだ女の子」をどうぞ。



 <関連エントリー>

 反権力ゲテモノ映画の傑作「拷問百年史」

 反戦映画「キャタピラー」と「芋虫」
 








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posted by 下等遊民 at 01:39| Comment(6) | TrackBack(20) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 さすがに若松孝ニだけに、一筋縄ではいかん作品のようですね。(良い意味で屈折していると言うか・・・)
徴兵忌避者で思い出したのが、「ひまわり」でM・マストロヤンニが気狂いのふりをして徴兵を逃れようとするシーンでした。他にも、「ビッグ・ウェンズデー」の中にも、狂人や盲目のふりをして徴兵を逃れようとするシーンがありました。
戦前の日本においても似たような事があったんでしょうかね〜。
Posted by wakuwaku1776 at 2010年09月09日 23:17
 >wakuwaku1776様

 >さすがに若松孝ニだけに、一筋縄ではいかん作品のようですね。

 まさに仰る通りで!60年代後半から70年代前半にかけて数々の「国辱」映画を世に出すことで良識派の顰蹙を買い続けてきた若松監督が手がけた反戦映画ですからね〜。まかり間違っても「二十四の瞳」みたいなヒューマニスティックなものであるはずがないわけで・・・・・。唯一、爽快な笑いをもたらしてくれたのがKUМAさん演じる愉快な徴兵忌避者だったわけです。「ひまわり」の例のシーンですが、実はこの映画を観た後、友人にこの映画の話をしている時にもこの話題で盛り上がったばかりでした。

 >戦前の日本においても似たような事があったんでしょうかね〜。

 著名人のエピソードとしては、詩人の金子光晴が息子を徴兵から逃れさせるためにわざと肺炎にかからせたってのがありましたよね。
 


 
Posted by 下等遊民 at 2010年09月10日 07:51
 はじめまして。拙ブログへのTBどうもありがとうございます。(沢山TBが来ていますね)
 徴兵拒否者の若松監督の元話を読むまで、KUMAさんの役柄は「知的障がい者」が共同体の中で特に排除されることなく暮らしている、ある意味「理想的」な状況をあの「狂気」と対比させたのではと思いながら見ていました。もちろん映画の中彼が「徴兵拒否」をしていたという詳細な解説があるわけではない。敗戦後、彼が赤襦袢じゃない格好で「戦争終わった!」と喜ぶ姿を見て、どう解釈するか、非常に裁量の大きい部分もある。「暗い」テーマの主題・場面で、彼の「赤襦袢」がスゴク生きているとも思います。

Posted by GO@あるみさん at 2010年09月16日 22:53
 >GO@あるみさん様

 どうもこちらこそはじめまして。早速のTB返しとコメント、ありがとうございました。貴エントリーは「ブログ旗旗」さん経由で拝読させて頂きました。

 >「知的障がい者」が共同体の中で特に排除されることなく暮らしている

 確かにこの映画を見る限り、KUMAさんは村人から揶揄されることはあっても、特別ひどい差別や迫害は受けてないようですね。但し、この当時にあって、KUMAさんが「知的障がい者」を装うかわりに戦争反対論者であることを堂々と表明していたとしたら、おそらく凄まじいまでの差別と迫害が待ち構えていたのではないかと。それがわかっていたからこそ、KUMAさんは戦争反対論者ではなく「知的障がい者」である方を選んだのではないかと思われます。戦争という祝祭空間においては「敵」がはっきりしているために、「敵」以外の者に対してはある種の寛容さがあったのかも知れませんね。いずれにしても、密室劇ともいうべき原作と異なり、KUMAさんという「異邦人」=「まつろわぬ民」の存在を投入したことで、この映画が原作をはるかに上まわる面白さを獲得したことは確かだと思います。
Posted by 下等遊民 at 2010年09月17日 08:32
TBに感謝!
私も、KUMAさんに、監督の立ち位置を仮託しているように思いました。
彼の存在が本作を際立たせている、といってもよいのでは?
Posted by マダム・クニコ at 2010年09月23日 14:27
 >マダム・クニコ様

 コメント、ありがとうございます。こちらこそ勝手にTBさせてもらい恐縮です。フェミニズム的視点に立脚した「キャタピラー」評、とても勉強になりました。タイトルの「キャタピラー」が「帝国主義」のメタファーでもあるという視点はまさに目からウロコでありました。その点では原作の「芋虫」よりも「キャタピラー」というタイトルの方が的確にこの映画の内容を表しているわけですよね。加害者であると同時に被害者でもあるという点で久蔵は当時におけるマジョリティの姿そのものを象徴しているようにも思われます。この映画が告発しているのは東京裁判で裁かれたような戦争指導者ではなく、彼らに踊らされた一般民衆であり、その意味でこの映画は「民衆の側の戦争責任」を問う映画であるとも言えるのではないでしょうか。

 >彼の存在が本作を際立たせている、といってもよいのでは?

 KUMAさんという「異邦人」の存在は、その当時の民衆の狂気を一層グロテスクなものと感じさせる上で極めて重要な役割を果たしているのだと思います。

 
Posted by 下等遊民 at 2010年09月24日 01:15
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