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サブカル雑食手帳

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2011年01月14日

「黒色火薬通信」と裏ビデオ

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 昨年末のことであるが、東京の某古書店から送付してもらった古書目録の中に、「黒色火薬通信」という変な誌名のミニコミ誌を発見。誌名の横には、「裏ビデオを科学する反革命宣言」とある。「裏ビデオ」と「科学」と「反革命」が一体、どう結びつくのか、とにかく面白そうなので取り寄せることにした。現物が来てみると、物凄く薄っぺらい小冊子で、「大逆75年(一九八六年)11月3日対西戸組死闘戦没発の日 創刊」と裏表紙に記されているところから、まずこれが寄せ場関連のミニコミ誌であることはわかった。ただ期待していた、「裏ビデオを科学する反革命宣言」というのは、「裏ビデオを科学する」という記事タイトルとそれとは別の「反革命宣言」という記事タイトルをスペースの都合からか句読点抜きで並べたものだったのである。それでも「裏ビデオを科学する」というからにはきっと裏ビデオについていろいろと社会科学的な分析(?)がなされているに違いないと期待しながら読んでみたのだがどうもそれらしい分析は見られない。「世間一般は、裏ビデオの女に、ストリップの踊り子さんに、そして我が愛すべき街の娼婦達に冷たい視線を投げかけます。そして、あまつさえキリスト教も『大切なものは金銭で売ってはいけない』等と、当のキリスト本人は石もて追われる娼婦を庇ったにも関わらず、売春をかなたに追いやります。そして左翼も又、『まっとうなプロレタリアート』への矯正を押しつけます。そのハズです。御本家マルクス自身が『党宣言』の中で『反革命に買収』されるものと言い、エンゲルスが『ドイツ農民戦争』で更に輪をかけてそのルンプロ差別を煽っています。」とか、さらには「ルンプロを裏切って『階級的労働運動の一翼』とやらに身売りした日雇全協も、私はその創建にさかのぼって否定されなくてはならないだろうと思います。」といった、いわばルンプロ的立場からの性産業擁護論だけは一通り展開されてはいる。が、最後まで読むと、どうやらこの文の筆者が本当に言いたかった事柄は、夫婦で裏ビデオ鑑賞することが大好きな友人から分けてもらった5本の裏ビデオ(タイトルは「Golden girl」「Star 84」「ブラックスロート」「岬の女」「絶叫妻アナル」)のコピー版を一本3000円で買ってほしいということであることが判明するのである。マルクス批判もエンゲルス批判も要はそのための前座に過ぎなかったというわけである。まったく人を喰った話であるが、ただアナーキズム系のミニコミ誌が裏ビデオ販売に関わっていたという事実には、1980年代半ば頃における裏ビデオのフィーバーぶりが反映されているとは言えるかも知れない。
 ちなみに大逆事件の大審院判決が下されたのは今から100年前の1911年1月18日。そのわずか一週間後の24日〜25日にかけて幸徳秋水ら12名の処刑が強行されたとのこと。

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posted by 下等遊民 at 22:26| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昨今よく聞くプレカリアートというのは、ルンプロとプロレタリアートの中間あたりを指す言葉なのでしょうか。

それにしても「ルンプロ」という概念を援用すれば、左翼の一部がなぜエロ・グロと親和性が高いのかが、すんなり理解できます。
Posted by MOTEL 801 at 2011年01月15日 14:42
 > MOTEL 801様

 >プレカリアート

 新自由主義下における新貧困層という意味ではかつての「ルンプロ」よりも遥かに広範な層を含んだ概念だと思いますが、かつて「ルンプロ」という言葉がある種の蔑称として使われていたのとは違って、目下、新自由主義と最も先鋭的に対峙する層というイメージで捉えられることが多いみたいですね。ところで「ルンプロ」で思い出したんですが、昭和6年に大ヒットした「ルンペン節」はなかなか味わいのある名曲です。是非、聴いてみてください。
 http://www.youtube.com/watch?v=x13vZb8UqFc

 >左翼の一部

 エロ・グロと親和性が高いから偉いってわけではないと思いますが、上に引用した「裏ビデオを科学する」の筆者が書いたエロ・グロ肯定論は裏ビデオを売るためのエクスキューズという側面はありながらも明らかにアナーキストや反日共系左翼の一部の人たちの心情を代弁しているところもあるような気がしますね。その昔、アナ・ボル論争なんてのがあったようですが、それを物凄く分かりやすい形にしたのがこれではないかと。

 
Posted by 下等遊民 at 2011年01月15日 20:33
 > MOTEL 801様

 「エロ・グロと親和性が高い」と言えば、芸能人ヘアヌード写真集ブームの仕掛け人で、「毛の商人」と呼ばれた高須基仁氏は学生時代、中央大・社学同の活動家で活動資金を得るために女子大生を口説いては全裸写真を撮影し、それを売りさばいていたというエピソードがありましたっけ。

Posted by 下等遊民 at 2011年01月15日 20:46
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