人気blogランキングへ

サブカル雑食手帳

メールはこちらへ

2006年09月12日

反権力ゲテモノ映画の傑作「拷問百年史」

go.jpg

  「この男は頭の良いやつだが変り者で、またそれをつねに意識してふるまう男だ、渾名が<新東宝>だ、他の会社の映画をぜったいに観ないで、エログロ三本立週間などというのを場末まで追いかけるからだ、ときには千葉県へまでも追いかける」ー大江健三郎「セブンティーン」(新潮文庫「性的人間」所収)よりー
 
 上の引用文からもわかるように、往年の新東宝映画と言えば、まず「エログロ」であり、「場末」である。これにさらに「ゲテモノ」「見世物小屋」などのタームをつけ加えれば、ほぼ新東宝映画のイメージを網羅したと言えるだろうか。日本の映画産業の最底辺で、志の低い俗悪映画として差別されながら、泡沫のように現れては消えていった新東宝の作品群。若松孝ニ監督作品「拷問百年史」(1975)はそんな新東宝映画の一つでありながら、「エログロ」「ゲテモノ」といった新東宝映画の特質を逆手に取ることによって権力による暴虐の歴史を赤裸々に焙り出した傑作である。 作品の内容をざっと紹介すると、まず江戸時代における隠れキリシタンへの拷問に始まって、戦前の特高警察による共産党シンパへの弾圧、日中戦争時の旧日本軍による満州での強姦、虐殺というように様々な時代における拷問の諸相を描いたものであるが、とりわけ旧日本軍の満州における暴虐は酸鼻をきわめたものに仕上がっている。日本の帝国軍人の3人組が横に並んで、大声で軍人勅諭(「一つ、軍人は忠節を尽くすを本分とすべし」というやつ)を唱えながら、中国人女性を強姦した挙句、情容赦なく銃殺し、「帝国軍人をなめるんじゃない!」と捨て台詞を残して去っていくシーンは凄惨そのもの。「場末のエログロ映画」でなければ、日本の帝国軍人の愚劣さや醜悪さをここまで身も蓋もなく描き出すことは到底不可能だったのではなかろうか。 観終わった後には、ただ後味の悪さだけがいつまでも尾を引くような映画だが、若松監督にとって、それはむしろ狙うところだったに違いない。


posted by 下等遊民 at 10:20| Comment(9) | TrackBack(5) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
う、なんとも凄そうな映画ですね。すでに貴タイトル「サブカル」を突き抜けていそうな雰囲気。レンタルされているんですか?……リバイバルはなさそうですね。
Posted by dr.stonefly at 2006年09月12日 11:29
>dr.stonely様
 早速のコメントありがとうございます。
タイトルに偽りなく、凄い映画です。この映画はビデオ化されているので、古い作品を多く揃えているようなレンタルショップなら、あると思います。若松孝ニ監督の昔の作品は「胎児が密猟する時」とか「異常者の血」とか毒々しいタイトルのものが多いですね。私が学生の頃は若松監督がパレスチナゲリラを撮った「赤軍PFLP世界戦争宣言」という映画が大学内でよく上映されてましたっけ。
Posted by 下等遊民 at 2006年09月12日 12:51
うぐぐ・・・
ちょっと見る勇気がないです。
>「胎児が密猟する時」とか「異常者の血」とか
これも、また、すごそう。。。。
Posted by gegenga at 2006年09月12日 13:03
 >gegenga様

 思わず引いてしまいそうなエントリーにコメントどうもです。

 >ちょっと見る勇気がないです。
 
 学生の頃、仲間と居酒屋で飲んでいて、終電車がなくなってしまい、結局、皆でオールナイトのピンク映画館で夜を明かそうってことになったのがこの映画との出会いだったんですが、さすがに女性の姿(単独、カップルを問わず)はなかったように記憶しています(笑)。日活ロマンポルノだったら女性客も多かったんですけどね。
Posted by 下等遊民 at 2006年09月12日 19:52
下等遊民さんのコメントを有効に引用させていただいたエントリーをアップしましたので、トラックバックさせていただきます。
ここの内容とは無関係なもので、すみません。
Posted by gegenga at 2006年09月14日 15:10
はじめまして。
TBいただきました。こちらからもお返し致します。
今はもう、新東宝や東映のような映画を作っても、
笑われるか無視されるかだけなのでなんとも寂しい時代ですね。
往年を回顧するしかないこんな時代のなかで、
若松監督は次にどんな映画を見せてくれるんでしょうか・・・。
Posted by 栗本 東樹 at 2006年09月18日 22:48
TBありがとうございます!
「拷問百年史」は、若松ファンの私としては、以前から気になりつつも、タイトルから予想される暗黒な内容にびびってしまって、未だ観ていない映画なのです。下等遊民さんのエントリーを読んで、この映画を観る日がさらに遠のいたような気が(笑)。
Posted by nyarome007 at 2006年09月18日 23:31
>栗本東樹様
 
 当ブログへのコメントとTB返し、ありがとうございます。
貴エントリーでの若松作品評、興味深く読ませて頂きました。
私の場合、若松作品をそう多く観ている方ではないのですが、60年代、70年代といった時代の匂いを感じさせる作品が好きで、中でも「胎児が密猟する時」はビデオ原版を所有しているほどのお気に入りです(ちょっとヤバ過ぎか)。故・種村李弘氏による、この映画への好意的な評(「怪物のユートピア」所収「滅亡愛の楽園」)を読んだのがこの作品を知るそもそものきっかけでしたが
。「御歳67歳の無頼漢・若松監督」の言葉に改めて時代の推移というものを痛感させられましたが、監督にはまだこれからも一層ディープな作品を期待したいところ。
Posted by 下等遊民 at 2006年09月19日 00:28
>nyarome007 様

 コメントとTB返し、ありがとうございます。
他のエントリーも学生運動や頭脳警察など若松ワールドとシンクロするような要素が多く、いい勉強になりました。

 >下等遊民さんのエントリーを読んで、この映画を観る日がさらに遠のいたような気が(笑)。

 気持ちはわからん事もないですが、この作品は単なるスプラッターを超えて若松監督の権力に
対するドロドロした怨念みたいなものが濃厚に漂う逸品なので、やはり機会があったら是非とも観てほしい一作であります。
Posted by 下等遊民 at 2006年09月19日 01:20
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

若松孝二監督作品の上映とお話
Excerpt: 「ボランティアステーション」の天野日佐恵さんより若松孝二監督の映画上映とお話の会のお知らせがありました。 じつを言うと天野さんは未知の方なのですが、鈴木邦男さんの掲示板で弊ブログの存在を知っ..
Weblog: 喜八ログ
Tracked: 2006-09-12 20:35

ピンク映画とは - IMIARU-NET
Excerpt: ピンク映画の記事にトラックバックできる辞書です。
Weblog: IMIARU-NET
Tracked: 2006-09-14 00:55

わしが「サヨク」で「フェミ」なワケ
Excerpt: このblogを読んでくださっている方の大半はおわかりのことと思うが、gegengaというのは立派な思想や主義主張を持っている人物。 では全くなく、日常生活やニュースにいらぬ突っ込みを入れる、お気楽な..
Weblog: かめ?
Tracked: 2006-09-14 15:08

若松孝二考 その2
Excerpt: 若松監督の「天使の恍惚」は1971年12月に撮影され、 その後、警察、マスコミ、地元商店会による「爆弾映画上映反対キャンペーン」を経て、 1972年3月に新宿文化で上映された。 ? ..
Weblog: AFTER THE GOLD RUSH
Tracked: 2006-09-18 22:23

“やりすぎコージー”!? 若松孝二!
Excerpt: ボクが一週間のうちで、 最も楽しみにしているTVプログラムは、 テレビ東京で毎週土曜の深夜1時25分から放送中、 今田耕司、東野幸治、そして千原兄弟がメインの、 「やりすぎコージー」(関東..
Weblog: 瓶詰めの映画地獄 ??地獄が闘えと俺を呼ぶ??
Tracked: 2006-09-18 22:35
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。