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サブカル雑食手帳

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2006年09月20日

「菊のタブー」絡みの表現弾圧事件史

 9月6日の秋篠宮家親王誕生後の慶祝ムードの陰で、乙武洋
匡氏のブログ「乙武洋匡オフィシャルサイト」が「炎上」した
のを見ても明らかなように、戦後日本における最大のタブーと
される「菊のタブー」はこの「慶事」を機に急速に強化されつ
つあるようだ。まるで安倍晋三のいう「美しい国」とやらは、
このタブーの上にしか存立できないシロモノだと言わんばかり
である。
 戦後の憲法は「思想の自由」と「表現の自由」を保証してい
るため、「菊のタブー」を侵犯するような表現に対しても、警
察権力が直接介入することは滅多にあり得なくなったが、それ
に代わって、今度は右翼と呼ばれる暴力的アウトロー集団が、
「菊のタブー」の侵犯に対しては常に目を光らせているという
のが目下の現状。
 ということで今回は過去において何らかの形で「菊のタブー」
が絡んだ表現弾圧事件をざっと概観してみることにしました。
事実に誤りや、補足すべき点がありましたら、御教示の方よろ
しくお願い致します。

 (嶋中事件)
 1960年12月号に掲載された深沢七郎の小説「風流夢譚」の中
で皇太子妃が民衆に殺される部分や民衆が皇居を襲撃した部分
が描かれたことなどについて不敬であるとして、右翼が抗議し、
翌年、17歳の右翼少年が中央公論社社長の嶋中鵬二宅に押しか
け、家政婦と嶋中夫人を殺傷するという事件が起きた。

 (「セブンティーン」事件)
 「文学界」1961年1月号と2月号に連載された大江健三
郎の小説「セブンティーン」(淺沼稲次郎社会党委員長を刺殺
した右翼少年山口ニ矢のモデル小説)に右翼が抗議。編集長が
謝罪広告を出した。

 (「日本読書新聞」事件)
 1964年3月9日号のコラム記事(天皇族の婚約を性的発
育不全と論ずる)に対して右翼が抗議。すぐ編集局長が謝罪文
を掲載。この謝罪に対して、15名の日本読書新聞執筆協力者
が抗議(13名執筆拒否)。

 (「噂の真相」皇室ポルノ事件)
 作家の板坂剛氏が、叔父の板坂元経由で入手した皇室のコラ
ージュ写真を、「噂の真相」80年6月号の特集記事「天皇Xデイ
に復刻が取り沙汰される皇室ポルノの歴史的評価」で公開。そ
れが右翼団体の逆鱗に触れた。
 このとき右翼は、噂の真相株式会社を直接ターゲットとせず、
取次や印刷会社、広告主、取引銀行などを狙い打ちした。取次
以外は右翼の要求に応じたため、「噂の真相」は廃刊寸前のピ
ンチに追い込まれる。収拾には、自分自身が右翼団体に乗り込
んで交渉するしかないと考えた岡留編集長は、右翼団体「防共
挺身隊」本部に出向き、福田進代表に遺憾の意を表明した上で
「臣岡留安則」と記した謝罪文を提出。それを同年10月号の誌
面に掲載した。岡留編集長はこの謝罪文を「良く出来たパロデ
ィ」と自画自賛。

 (「驪團」事件)
 1983年4月、江東区深川公園で「最暗黒の東京」という
芝居を上演しようとした過激アングラ劇団・驪團(りだん)に対
し、江東区はポスターに木戸銭の表示があることを口実に公園
占用許可を取り消す。開演予定の26日「おわび」を続ける驪
團(りだん)に対し、警察官数十名、幌トラックの中に右翼が潜
み、挑発・恫喝をくりかえす。公園ポスターに、昭和天皇の首
を大ナタで断頭した図があり、これに対する権力による弾圧で
あり、反天皇的芝居への表現弾圧である。

(「パルチザン伝説」出版妨害事件)
河出書房は同社発行の月刊誌「文芸」1983年10月号掲載
の桐山襲「パルチザン伝説」(現実に存在した、東アジア反日
武装戦線による昭和天皇爆殺作戦計画を主題とした小説)の単
行本化を右翼の執拗な脅迫のため断念した。(その直後、第三
書館が作者に無断でこの作品を単行本化した)

 (月刊「新雑誌X」天皇イラスト事件)
 月刊「新雑誌X」の八四年八月号に、東郷健氏が主宰する
「雑民の会」が、イラスト入りの意見広告を出稿した。そこ
には、昭和天皇がマッカーサーに犯されるという挑発的なイ
ラストが掲載されていた。"不敬"だと憤怒した右翼が雑誌社
に街宣車を連日集結させて抗議活動を展開し、事務所に入り
込んで窓ガラスを割るなどして暴れ回った。月刊「新雑誌X」
はこの事件を機に廃刊。

 (佐藤満夫監督刺殺事件と山岡強一監督射殺事件)
 1983年11月3日、東京のドヤ街・山谷に暴力団日本国
粋会金町一家西戸組が天皇主義イデオロギーを掲げた右翼政治
結社「大日本皇誠会」を旗揚げ。その直後、皇誠会メンバーは
この地で戦闘的な労働運動をつくりあげてきた山谷争議団に武
装襲撃を仕掛けてきた。
 この襲撃は争議団メンバーとその場に居合わせた約一千名の
労働者たちの反撃にあい、皇誠会メンバーは退散。皇誠会の日
の丸つき装甲車は、ひっくり返されて炎上した。
 その後、映画監督の佐藤満夫氏と山岡強一氏は、山谷での日
雇い労働者の闘いを記録したドキュメンタリー映画「山谷−や
られたらやりかえせ」製作中に皇誠会メンバーのテロにより死
亡する。(佐藤満夫氏は1984年12月22日に刺殺され、
山岡強一氏は1986年1月13日に射殺される)
 ドキュメンタリー映画「山谷−やられたらやりかえせ」は、
佐藤満夫監督の「人民葬」のときの公約通り、佐藤満夫監督が
殺された一年後の1985年12月22日に初上映された。

 (富山県立近代美術館主催「'86とやまの美術」事件)
 県立近代美術館(小川正隆館長)主催の「'86とやまの美術」
に出品された大浦信行「遠近を抱えて」(リトグラフ、10枚の
シリーズ)は天皇の顔写真を曼陀羅風の構図のなかに、女性の
裸体や内臓などとともに配したものであったため、6月県議会
の教育警務委員会で石沢県議(自民)がこの作品を取り上げて、
「県民に親しまれている」日本の象徴である天皇を裸体や内臓
と並べる「不快な」作品だ、と批判。
 7月下旬には右翼が全国動員で県教委に押しかけ、作品の焼
却処分と館長の解任を要求した。

 (「風の旅団」事件)
 1989年9月、反天皇制の活動家達に支持されていた過激
演劇集団「風の旅団」が不許可となったにも拘わらず東大駒場
構内で公演を強行、構内に機動隊が導入され、逮捕者3名が出
る騒ぎとなった。今のところ最後の(東大内への)機動隊導入
の事件となる。

(本島等・長崎市長に対する銃撃事件)
「明仁天皇即位の礼・大嘗祭」の日取りが正式に決められる前
日の1990年1月18日、「天皇の戦争責任」発言をした本
島等・長崎市長に対して、右翼・正気塾メンバーによる銃撃テ
ロが加えられた。
 国内最大の右翼団体の連合組織である「全日本愛国者団体会
議」九州地区事務局は事件直後、「今回のような軽薄なことは
慎むように」との緊急通告を行った。
 だが、その後、九州地区二十七団体は二十四日、福岡市で代
表者会議を開き、「長崎市長の狙撃を支持する」とテロを容認
する統一見解を確認した。彼らによれば、侵略ではなく日本国
家自衛のための戦争で、天皇の戦争責任はなく、本島発言は国
家、国民への重大問題であり、言論の自由の濫用を戒め、狙撃
という超法規的手段もやむを得ないとされる。

 (「噂の真相」雅子妃呼び捨て事件)
 2000年6月、「『噂の真相』誌が雅子妃を呼び捨てにし
た」という理由で広域暴力団住吉会系の右翼団体で全国一の組
織力を誇る日本青年社の構成員2人が編集室に乗り込み突然大
暴れしたため、岡留編集長は全治40日の大怪我を負った。
 























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posted by 下等遊民 at 20:40| Comment(6) | TrackBack(6) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは、TB感謝です。
「菊」に関しては、権力・右翼もさることながら、それを批判すれば、普通の市民から「やわらかな」弾圧を受けるという思想統制が最悪だと感じてます。個人的には、むかし、批判めいたことを口にしていたら、どこぞの「子ども」に「そんなことをいうのは非国民だよ」と言われ、ゾッとした記憶があります。
 「山谷ーやられたらやりかえせ」ですが、10年以上前に一度観たきりで記憶が定かではないのですが、
>争議団と皇誠会との闘いを記録したドキュメンタリー映画
ではなく、使い捨てられる「日雇労働者」を描いたものだったような気がします。あと筑豊の炭坑ではたらく朝鮮労働者が映されていた気が……。いわゆる「上映会」でしか映されることのないこの映画を気軽にもう一度みることができません。観たときにはあまり知識のなかったワタシの記憶違いかもしれませんが……。
もう一度みたい映画です。
 
Posted by dr.stonefly at 2006年09月21日 02:32
>dr.stonefly様
 コメント及び貴重な御指摘ありがとうございました。実は社会評論社刊「右翼テロ」という本の中に映画「山谷・やられたらやりかえせ」の冒頭シーンの紹介があり、それによるとこの映画は「1983年11月3日/日本国粋会金町一家/西戸組が/日の丸を掲げ/山谷争議団に対し/武装襲撃をかけた。/以来、一年余りにおよび/斗いが繰り広げられた」というタイトルではじまるということだったので、「争議団と皇誠会との闘いを記録したドキュメンタリー映画」だと判断したのですが、実際この映画を見て内容を確認する機会がないため、「山谷での日雇い労働者の闘いを記録したドキュメンタリー映画」に訂正させて頂きました。この映画は是非とも観たいと思っているのですが、なかなか観れないのが残念です。
Posted by 下等遊民 at 2006年09月21日 03:26
TBありがとうございました。
関連のエントリーをつけたいのですが、TB2回失敗してるのでコメントにURL貼り付け。

http://ameblo.jp/kandanoumare/entry-10016856804.html

戦前も、国粋主義者が率先して戦争への道を露払いしていたようですが、今は大衆社会状況だから、戦前回帰ではないんじゃないかな。
むしろ、戦前はファシズムではなくて、今のほうがファシズム。(だいたい「天皇制ファシズム」ってボディコンのマタニティ・ドレス、っていうぐらい変。呉智英ふうにいえば、ファシズムって「民主主義」の一バージョンであって、貴族制、君主制とはしっくりいかない。
2チャンネルなんかでは、「何かというとしのびよるファシズムというサヨク」が笑われるけど、戦前回帰しなければ安心というわけではない。一頃はスターリニズムの心配を、皆さん、なさったのだから、これからポスト工業社会の新型ファシズムを警戒したってよかりそうなものです。
Posted by kuroneko at 2006年09月21日 08:35
>kuroneko様

 コメント&TBどうもです。

 >今は大衆社会状況だから、戦前回帰ではないんじゃないかな。

 これは姜尚中氏が現在はびこっているナショナリズムを「都市型の不定形なナショナリズム」と定義していることとも通じるんじゃないかと思います。ファシズムは一面、草の根的な大衆運動という性質を有しており、確かにその点では貴族制や君主制よりも民主主義と近いところにあるのかも知れません。ただ戦前といえども「一部の悪辣な国粋主義者が平和主義的な大衆をだまして戦争に駆り立てた」というのは一種のフィクションで、大衆の圧倒的多数は好戦気分に浸っていたとみる方がいいのではないでしょうか。天皇の戦争責任や指導者の戦争責任だけでなく、大衆の戦争責任も問われなくてはならないと思います。
Posted by 下等遊民 at 2006年09月21日 21:20
エントリーの趣旨からはずれたコメントで恐縮なのですが。
1983年、山谷争議団が駅前でビラを配っているのをもらった記憶があります。
心の中で「頑張れ!」と応援したことを覚えています。
Posted by gegenga at 2006年09月22日 14:05
 >gegenga様
 
 コメントどうもです。
山谷争議団は最近では共謀罪反対の集会に参加したりと相変わらず頑張っているようです。
dr.stoneflyさんから得た情報ですが、今年の1月17日に山谷の日本堤伝導所という教会が、山谷争議団が出入りしているという理由で警察のガサ入れをくったそうで、牧師の小田原紀雄氏の抗議声明がネット上に出ています。ガサの理由は教会が暴力団金町一家解体集会主催者の拠点になっているという容疑。この地での暴力団と警察の癒着ぶりは徹底しているみたいですね。

Posted by 下等遊民 at 2006年09月22日 22:49
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