所謂「朝鮮人従軍慰安婦」問題にからんで、今年6月の県議会で、埼玉県の上田知事が「古今東西、慰安婦はいても、従軍慰安婦はいなかった」とオバカ発言、自ら従軍慰安婦だったと証言している韓国籍のイ・ヨンスさん(77歳)から発言の撤回と謝罪を求める抗議を受けた。また安倍政権誕生後には、安倍自民党中枢に入り込むことで悪ノリした中川昭一が、またも次のようなバカ発言で物議を醸した。即ち「首相が言うように、政治家は過去の歴史認識を左右してはならない。私が教科書問題で訴えたのは、専門家を二分している(従軍慰安婦などの)問題を、一方的に教科書に載せるのは不適当ということだ」 と。このように「朝鮮人従軍慰安婦」問題については、軍の関与と強制性を認めた「河野官房長官談話」(平成5年8月4日)以後も政治家による上記のごとき破廉恥な発言が、折につけ、まるで間欠泉のように吹き出しているというのが実情だ。そこで今回は戦後混乱期の1947年に発表され、その後二回も映画化されながら、日本社会の経済的繁栄と共に、すっかり忘却されてしまったと見える「春婦伝」という小説を、「朝鮮人従軍慰安婦」問題に関する上記のようなトンマな発言に対するアンチテーゼとして取り上げてみたい。
「春婦伝」の作者田村泰次郎は戦前もプロレタリア文学系の作家として活躍していたようであるが、日中戦争で応召され、復員後の1947年3月に発表した「肉体の門」という作品によって一躍時代の寵児にのしあがった。「春婦伝」はその2ヶ月後に発表された作品であるが、その初版の「序」には「朝鮮人従軍慰安婦」という歴史的事実を立証するかのような言葉が次のようにはっきりと書かれていた。
「戦争の間、大陸奥地に配置せられた私たち下級兵士たちと一緒に、日本軍の将校やその情婦たちである後方の日本の娼婦たちから軽蔑されながら、銃火のなかに生き、その青春と肉体を亡ぼし去った娘子(じょうし)軍(朝鮮人従軍慰安婦)はどれだけ多数にのぼるだらう。日本の女たちは前線にも出て来られないくせに、将校とぐるになって、私たち下級兵士を軽蔑した。私は彼女たち娘子軍への泣きたいような慕情と、日本の女たちへの復讐的な気持ちで、これを書いた。『肉体の悪魔』、『肉体の門』と同じく、長い戦場生活のあひだに、自分の胸のなかに鬱積したものをぶちまけたものだ。この作品の出来栄えについては、正直なところまだ私自身よくわからない。ただ私は、自分の肉体のなかに、血と硝煙の匂ひで燻しかためられた、理窟を超えた悲痛のかたまりのやうなものがあるのを、はっきりと感じている。私は夢中で、それを表現しようと試みたにすぎない。」
源氏名を春美という一人の朝鮮人従軍慰安婦の視線によって日本軍隊の愚劣さを描いたこの「春婦伝」という作品を作者が書こうとした主たる動機が、国家犯罪の告発であるよりも、むしろ「娘子軍への泣きたいような慕情」であり、また「日本の女たちへの復讐的な気持ち」であったという点には、いかにも作者の男権的エゴイズムの臭いがして辟易するが、そうした制約にもかかわらず、この作品が「朝鮮人従軍慰安婦」問題という歴史の暗部にスポットを当てた数少ない文学作品のひとつであることは正当に評価されるべきであり、その意味でもっともっと読まれてもいい作品だと思うのだが。
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従軍慰安婦については渦中の下村副官房も否定したくて仕方ないようですね。壷内閣がこのまま進めば、河野発言もなかったことになり、歴史から抹消されるかもしれません。
やはり打倒アパ壷です。
拙記事に対して補足的なコメントありがとうございます。下村副官房のトンデモ発言は熱湯浴系サイトで喝采を浴びてる様子ですが、こんな手合いが教育や道徳を云々すること自体、噴版ものですよね。しかしそれにしても中川にしろ下村にしろ高市にしろ壷内閣はろくでもない奴ばかり。
@前線で軍の慰安所は存在した(従軍慰安所というのは俗称です)。また、日本人より朝鮮人の比率が高かった。
A慰安所自体は合法で、設置、移動等に軍は関与していた。
B経営と募集は民間業者の仕事で、募集時に強制や詐欺まがいのことがあれば当然違法。そのような違法行為に官憲の組織的関与があったという証拠はみあたらない。
ということで、特に公務員は露骨な朝鮮人差別をすることをさけていたはずです。もしあれば例外ということになるでしょう。
なお、慰安所自体は内地にある公認売春施設と同様合法的なもので他国でも多く採用していました。戦地という過酷な環境は別として、今と同様な道徳観だけでは断罪できません。
軍の慰安所についての詳細な御教示ありがとうございました。
>慰安所自体は内地にある公認売春施設と同様合法的なもので他国でも多く採用していました。戦地という過酷な環境は別として、今と同様な道徳観だけでは断罪できません。
確かに当時の天皇制国家制度の中に「合法的」に組み込まれたシステムについてそれだけを国家制度から切り離して断罪することはできないと思います。ただ過去の歴史から何かを学ぶためには少なくとも歴史的事実を明らかにする必要があるにもかかわらず、どうも現在の政府の姿勢には居直りに近いものを感じざるをえません。