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サブカル雑食手帳

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2007年01月28日

ヒッピーカルチャー よ、不滅なれ!

 「週刊朝日」1月26日号より宮崎学氏の「ニッポンの『右
翼』大研究」の連載(4回予定)が始まった。
 愛国心教育、靖国参拝、防衛省昇格など「壷三」政権下で急
速に右傾化が進行しつつある中で、これまでそうした右傾化を
最もラジカルに主張してきた右翼・民族派の代表者に直接、彼
等の考えを訊くという企画であるが、とりわけ私が興味深く思っ
たのは連載第1回目に提示された右翼・民族派のメンタリティ
に関する部分である。宮崎氏は右翼・民族派のメンタリティを、
故丸山真男氏がその著書「増補版 現代政治の思想と行動」の
中で分析した「無法者」のメンタリティにもとめ、それを次の
ようにまとめている。

 (1)一定の職業に持続的に従事する意思と能力の欠如ー
    つまり市民生活のルーティンに堪える力の著しい不
    足。
 (2)ものへの没入よりも人的関係への関心。その意味で
    無法者は原則として専門家に向かない。向くとして
    も大抵は「暴力のエキスパート」である。
 (3)上の二点の裏側として、不断に非日常的な冒険、破
    天荒の「仕事」を求める。
 (4)しかもその「仕事」の目的や意味より、過程で惹起
    される紛争や波瀾それ自体に興奮と興味を感じる。
 (5)私生活と公生活の区別がない。特に公的な責任意識
    が欠け、その代りに(!)私的な、あるいは特定の
    人的な義務感(仁義)が異常に発達している。
 (6)規則的な労働により定期的な収入をうることへの無
    関心もしくは軽蔑。その反面、生計を献金、たかり、
    ピンはねなど経済外的ルートからの不定期の収入も
    しくは麻薬密輸などの正常でない経済取引、によっ
    て維持する習慣。
 (7)非常もしくは最悪事態における思考様式やモラルが、
    ものごとを判断する日常的な基準になっている。こ
    こから善悪正邪の瞬間的な断定や「止めを刺す」表
    現法への嗜好が生れる。
 (8)性生活の放縦。

 それでは丸山真男氏が規定した上記のような「無法者」の存
在様式とは対極をなす存在様式、即ち「市民的人間類型」とは
具体的にどのような生き方を指すのか。宮崎学氏は上記の各項
目に対応させながらそれを次のように規定している。

 (1)ただ営々と市民生活のルーティンに埋もれて生きて
    いる。
 (2)ヒトよりもモノに関心がある。人間関係をあまり大
    事にしない。
 (3)冒険や荒っぽいことが苦手で、常にそこから逃げる。  
 (4)目的や意味ばかり問い、それがはっきりしないと動
    かない。
 (5)私生活と公生活を使い分ける。「公」で都合の悪い
    ことは「私」に逃げ、「私」で都合が悪いことは「公」
    に逃げる。
 (6)定期的な収入を失うことを恐れ、その奴隷になるこ
    とをいとわない。
 (7)最悪の事態を考えまいとし、平穏な秩序がいつまで
    も続くことを請い願う。善悪の判断にぐずぐずし、
    きっぱりとした態度がとれない。
 (8)「失楽園」や「援助交際」にはけ口を求めながら、
    「仮面夫婦」を続ける。

 さて上記のような市民的メンタリティについて、宮崎氏は
「私には、丸山がいうところの『理想』的な市民像よりも、
『無法者』の精神のほうが、わかりやすい。」とまで言って
いるが、なるほどここで提示されている市民的メンタリティ
には、右翼的メンタリティにラジカルに対抗し得るほどの魅
力があるとは到底言えないだろう。そこで思い出されるのは
何年か前に発表された朝倉喬司氏の「男根(ファロス)と陰
茎(ペニス)」という論文(洋泉社ムック「極道・その女た
ち」所収)である。この論文の中で、朝倉氏は1970年前
後に世間の注目を集めたヒッピーが、そのライフスタイル、
ファッション、価値観、嗜好品に至るまで、あらゆる点でヤ
クザのそれと対極的であることに着目し、それを次のような
ニ項対比として提示した。
 
 非暴力/暴力
「やさしさ」の称揚/「いてまえ」の称号
絶対平和/武装自衛
 脱テリトリー/縄張り命
 インターナショナル/ナショナル
 平等/序列
ポエジー/信念
 金銭への無頓着/銭がないのは 首がないのと同じ
 脱俗/俗中の俗
精神的/唯物的
女性的ファミリー/父性的ファミリー
 感性/心情
 自由/服属
 想像力/判断力
マリファナ/シャブ
放浪/盛り場徘徊(見回り)
 自然/人工
 徒歩/高級外車
フェスティバル/興行
両性具有/「男」の強調

 言うまでもなく左側の項目がヒッピー的メンタリティを象徴
し、右側の項目がヤクザ的メンタリティを象徴しているわけだ
が、この対比図式での左側の項目には右翼・民族派やヤクザの
メルクマールである男権的(男根的?)文化に対するアンチテー
ゼとしてのある種のヴィヴィッドな魅力が秘められているとは
言えないだろうか。朝倉喬司氏によれば「結局、ヒッピーのイ
デオロギーはその後、その『反社会性』が水で薄められて大衆
化され、市民社会に溶解したのである。(中略)だから、今は
もう絶滅したヒッピーとヤクザとの対比図式は、現今の市民社
会とヤクザとのそれに、暗黙のうちに連接しているのである。」
とのことであるが、どうも最近ではインターネット上のブログ
やSNSにおけるコミュニティなどバーチャルの世界で、かつ
てのヒッピ−カルチャーの中でもまだ「市民社会に溶解」する
以前のコアな部分が再浮上しているような気がしてならないの
である。
 環境問題や格差問題やジェンダー問題が先鋭化する中で、か
つてヒッピーカルチャーが内在させていた「自然崇拝」や「平
等」や「性差の解消」といったコンセプトは現在再評価されて
しかるべきであろう。
 1968年の京都を舞台にして大好評だった映画「パッチギ!」
では、映画の終盤近く、オダギリジョーが懐かしいヒッピー
ルックで登場したのが印象的だった。
 ということで最後に「『族』たちの戦後史」(馬渕公介著・
三省堂)という本の中から、ヒッピーカルチャーのメッカだっ
た頃の新宿(風月堂という喫茶店がヒッピーの溜まり場だった)
の雰囲気を見事に捉えている部分を引用しておくことにしよう。
(以下引用)

 「実際当時の新宿は、一つの街に一つの<族>というのでは
なく、大小様々な若者の群れがほぼときを同じくして一斉に花
開き、渦になり、ボリュームのある混沌を形成していた。フー
テン(族)がいて、ヒッピー(族)がいて、全共闘あるいは反
戦少年がいて、アングラ族がいて、サイケ族がいて、それらす
べてに長髪族がいて、さらに歳月を経て相当に洗練されたアイ
ビー族も混じっていた。そしてそれらの群れは互いに多少の反
発を孕みつつも共震し、連動し、対流し、激しく弾けていた。
一人一人を見れば、荻窪から中央線に乗って『週末ヒッピー』
をしに、ジーンズとTシャツ姿で新宿へ出て来て、デモがあれ
ばデモに参加し石を投げ、夜になればアンダーグラウンド劇を
観賞し、サイケ調のポスターを買って帰る・・・・・というよ
うな、一例ではあるが一人がたいてい幾つかの族を兼ねていた。
それにアングラ劇団の団員にしてからが、劇の途中で抜け出し
て、デモにはせ参じてしまうという反戦少年であったりもした
のだ。」









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posted by 下等遊民 at 09:47| Comment(2) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
そういえば、僕が都会に出てきた頃、ヒッピーご用達の靴「ビルケンシュトック」が一部のオシャレな人たちの間でブームになってて街でもよくみかけましたが、マスコミはそれをほとんど無視してましたね。
現場とメディア、両方を観察していかにメディアが偏った情報を流しているかがわかり非常に参考になった思い出があります。
そして、例え単なるファッションになってもヒッピーカルチャーというのがいかに現代社会において破壊力を持つか、というのも十分に理解できました。
Posted by fabrice at 2007年01月28日 18:43
 >fabrice様
 コメントどうもです。
 面白いエピソードですね。実は今でも「ビルケンシュトック」の靴を愛用している知人がいるんですが、ブームの頃、マスコミがほとんど無視していたという話は全く知りませんでした。
  
 >例え単なるファッションになってもヒッピーカルチャーというのがいかに現代社会において破壊力を持つか

 元々、思想的なムーブメントとして始まったものが、一つのファッションとして「市民社会に溶解」していくという現象はある意味でそのイデオロギーが薄められた形で幅広く受け入れられていくということでもあるので、それをプラスに評価することもできますね。フッションもある種の自己表現なわけで、「たかがファッション、されどファッション」ってところですかね。
Posted by 下等遊民 at 2007年01月29日 12:55
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