しばしば行う差別的としかとれない発言の中にどうやら他者の
内面への恐怖があるのではないかということだ。」
(大塚英志著「サブカルチャー文学論」より)
昨年の8月15日、靖国神社が旧日本軍の軍服姿に身をやつ
し、大きな旭日旗を掲げて悦に入る(雨宮処凛さんの言葉を借り
れば「世界の中心で自分萌えを叫ぶ」)軍国オタ連中の一大コス
プレイベント場と化したのはまだ記憶に新しいけれども、連中を
仮にコスプレ右翼と呼ぶとして、そのメンタリティーと芸風にお
いて彼等の大先輩というに相応しいのが東京都知事・石原慎太郎
である。
ナショナリスト、タカ派、右翼、保守反動、レイシスト、ミソジ
ニスト、ボナパルティスト(ボナパルティズムはナポレオン・
ボナパルトの政治手法に因んだ用語であるが、新左翼業界では
石原をボナパルティストと規定する傾向が強い)etc・・・・・、
石原慎太郎にはこれまで実に多彩なレッテルが貼られてきたが、
その中のどれ一つを取っても何とも場当たり的で、バックボーン
となる思想的信念のようなものは感じられず、むしろ彼はこれまで
そうしたレッテルを自分にとって都合のいい意匠(衣裳)として利
用してきたのではなかったか。度々の問題化にも拘わらず、
石原慎太郎が差別的発言をくり返すのも、そうした発言が社会
的顰蹙を買う一方で、ある種(?)の人々にとってはそれが一
種のカタルシスとして作用してしまうことをちゃっかり計算し
た上での、つまりは大向こうウケを狙った上でのことだからに
違いない。そういう意味でもコスプレ右翼という言い方は石原
の本質をかなり的確に表しているのではないかと思われる。
ところで先に例を上げた靖国神社に屯する、自分萌えの軍国
オタ以外にもう一つ、コスプレ右翼という言葉からすぐに連想
される集団がある。これぞ言わずと知れた暴走族だ。彼等が
「護国」やら「尊皇」やら「愛国」などといった言葉を好んで使い、
日の丸に特攻服といった右翼ファッションに身を固めるのは、そ
うした記号が周囲を威圧するのにもってこいだからである。そ
ういう意味では石原のメンタリティや芸風は自分萌えの軍国オ
タよりはむしろ暴走族の方により近いのかも知れない。
今からほぼ半世紀前、石原慎太郎は「太陽の季節」により作
家デビューすることで、いわゆる「太陽族」の生みの親となり、
その教祖的存在となった。「太陽族」と「暴走族」(なぜか両
者とも湘南がシンボル的スポット)、どうやら「族」と名のつ
くものは世代に拘わりなくコスプレを愛好する傾向があるようだ。
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