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サブカル雑食手帳

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2018年08月14日

ああ軍歌

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DVD「渥美清の泣いてたまるか」(1966年から放映された連続テレビドラマ)シリーズはこれまで全く見たことがなかったのだが、今回、友人の強い薦めによって、その第16巻(「ああ無名戦士!」と「ああ軍歌」の二本を収録したもの)を見て、二本ともなかなかの傑作だと思った。「ああ無名戦士!」の主人公(子供の頃に空襲で足を負傷)は、電車内で、傷痍軍人(白装束)のフリをして、アコーディオンを抱え、「戦後22年、祖国日本は見事に立ち直りましたが、私はいまだにこのような惨めな姿をさらしております。しかし、私とて、好きこのんでこのような姿をしているのではありません。」といった前口上とともに、「ラバウル小唄」とか「海行かば」といった軍歌を歌っては施しを得ることで生計を立てている。一方、「ああ軍歌」の主人公は、戦争で兄を失うという辛い経験のせいで、軍歌に対しては強い拒否感情を持っていて、軍歌好きの上司(山形i勲)から宴席で軍歌を歌うことを強要(今なら完全なパワハラですな!)されても頑として歌おうとしない。その結果、上司に睨まれ、ついには会社をクビになってしまうのだが、落ち込む主人公に向って、母親(賀原夏子)は、「あれだけの戦争だもの。お前みたいなのが一人ぐらいいなきゃ死んだ人は浮かばれやしないよ。」と言い放つのである。軍歌で喰いつないでいる男の話も、軍歌に拒絶反応を示してしまう男の話も、軍歌というものを通して、戦後風景の一断面を的確に捉えている点では同じであると思った。
posted by 下等遊民 at 14:31| Comment(5) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>「あれだけの戦争だもの。お前みたいなのが一人ぐらいいなきゃ死んだ人は浮かばれやしないよ。」

戦後の時代精神を圧縮したような名言ですねえ。

子どもの頃、軍歌って韻隠滅滅で嫌いでしたが、高校に入ったら、面白がって歌う級友がいって驚きました。
ガラの悪い高校だからかも。

それだけ時代が戦争から隔たったからかもしれません。

1966年ならテレビで見ていてもおかしくはないんだけど、記憶がないなあ。
Posted by kuroneko at 2018年08月21日 22:36
 >kuronekoさま

 >戦後の時代精神を圧縮したような名言

 この言葉の背後には、軍歌を歌うことではなく、たとえ会社をクビになっても、軍歌を歌うことを拒否することこそが戦死者の鎮魂につながるという、ある種パラドキシカルな思いが隠されていると思うんですが、これをさも当たり前のことのようにさらっと言ってのけてしまうところにこそ、この母親の凄さが感じられるような気もします。一見、娯楽作品のように見せながら、戦死者の鎮魂とは何かという重いテーマについて考えさせられてしまう作品というべきかも。ついでながら、母親役の賀原夏子と軍歌好き上司役の山形勲は実に味わいのある俳優さんでしたよね。

 >それだけ時代が戦争から隔たったからかもしれません。

 そういえば、にっかつロマポルの「キャバレー日記」という作品の中で、ピンキャバの朝礼の際、店長が従業員全員に軍歌を歌わせるシーンがたびたび出てきた記憶があるんですが、これなんかも戦争から隔たった時代における軍歌の活用(?)のされ方を考える上で貴重な作品といえるかも知れませんな。

 >1966年ならテレビで見ていてもおかしくはないんだけど、記憶がないなあ。

 1970年代以降は、渥美清というと完全に寅さんのイメージが定着してしまった感がありますが、今回、「泣いてたまるか」を初めて見て、寅さん以前の作品をもう一度チェックしてみる必要を痛感させられた次第です。
Posted by 下等遊民 at 2018年08月23日 00:32
 >kuronekoさま

>店長が従業員全員に軍歌を歌わせるシーン

 歌詞の中に「ミスニッポン」という店名がでてきたような気がするので、正確には軍歌風に作られた「ミスニッポン」のPRソングというべきかも。
Posted by 下等遊民 at 2018年08月23日 13:16
>キャバレー日記

監督 根岸吉太郎 脚本 荒井晴彦 ってビッグネームですねえ。

1982年作品というと戦後37年。戦中派のゴリゴリなどは既に過去の人だったでしょうが、逆に戦前の体験がないのにノスタルジックに旧軍を懐かしむ傾向ってのは、出てきたてだったかも。(70年代なら考えられない)

いま思いついたんですが、校歌を短調に編曲したら軍歌みたいに、軍歌をメジャーにしたら校歌っぽく聞こえないかな。

Posted by kuroneko at 2018年08月23日 21:43
 >kuronekoさま

 >1982年作品というと戦後37年。

 この前年の1981年に、晩聲社という出版社から元キャバレーのボーイだった和田平介という人が自らの辛いキャバレー体験を書いた「キャバレー日記」という本が出ていて、おそらく映画のほうもこの本がヒントになったものと思われるんですが、本の表紙のキャッチコピーがなかなか秀逸で、「シコシコサービスや軍隊式人間管理を駆使する性の労働現場は、蜉蝣のような人生の溜り場だった!」というものでした。仄聞するところでは、この当時、軍歌を歌わせることで従業員の士気(?)高揚につとめていたキャバレーは少なくなかったのではないかと。

 >校歌を短調に編曲したら軍歌みたいに、軍歌をメジャーにしたら校歌っぽく聞こえないかな。

 高校野球の際に歌われるいろんな高校の校歌を聴くだけでも、校歌と軍歌の親和性は明らかですよね。キャバレーに限らず、「軍隊式人間管理を駆使する」必要があるところでは、軍歌調の歌というのがもっとも使い勝手がいいのかも。
Posted by 下等遊民 at 2018年08月24日 20:27
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