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サブカル雑食手帳

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2005年08月21日

「家畜人ヤプー」をめぐる思い出あれこれ

少し前に、沼正三氏のエッセー「ある夢想家の手帖から」に触
れた関係で、氏の伝説的マゾ小説「家畜人ヤプー」(以下「ヤ
プー」)について、ネット上で、多くの方が感想を書かれてい
ることを知りました。「ヤプー」が終戦直後、雨後の筍のよう
に氾濫したカストリ雑誌の中から産声を上げた「奇譚クラブ」
というアングラ雑誌に連載開始されたのが昭和31年、初めて
単行本化されたのが昭和45年であったということを考えると、
今尚、話題になり続けているということ自体、驚くべきことで
はないでしょうか。
「ヤプー」の話題性ということでいえば、作品の内容もさるこ
とながら、謎の作者探しや代理人の存在、右翼団体による脅迫
事件、出版記念パーティーでの過激なSMショーなど、作品を
めぐるミステリアス&スキャンダラスなエピソードの数々も大
いに寄与しているものと思われます。
で、今回は既に流通している情報に屋上屋を架すのを承知の上
で、「ヤプー」をめぐるエピソードについて、私の一知半解の
知識をもとに、思いつくままに書いてみたいと思います。

 まず右翼団体による脅迫事件でありますが、これは「ヤプー」
が都市出版社から単行本として出版された直後に起きた事件。
 当時、高校生だった私は、授業中に隠れて「ヤプー」を読ん
でいたりした事情も手伝って、この事件には大いに関心を抱い
た記憶があります。
 新聞の見出しは「ヤプー脅される」で、右翼団体名は大日本
平和会。
「青少年の愛国心を著しく害する」というのが脅しの理由だっ
たようですが、「すぐに出版を止めないと、お前らは消しゴム
になる」といったヤプー的ギャグみたいな脅し文句には正直笑
えました。ずっと後になって、「篦棒(ベラボー)な人々」
(竹熊健太郎・著 太田出版)を読み、最初は「ヤプー」のP
Rのため、右翼による脅迫事件を出版社側が自作自演しようと
してた矢先に、本物の右翼が脅しに来てしまったという裏話を
知って、この業界のあざとさには正直なところ呆れてしまいま
した。
 この当時の「ヤプー」をめぐるもうひとつの話題、出版記念
の「ヤプーショー」では、アングラ劇団の女優さんたちが、女
王様に扮して、有志のM男を相手に「人間便器」の実演が行な
われました。この当時としては、型破りの企画であり、関係者
は後日、警察で油を絞られることになるわけです。

 警察沙汰といえば、当時、新宿でオープンしたSMショーパブ
「家畜人ヤプーの館」の摘発もその一つ。檻に監禁されたM男を
女王様が鞭で打つというショーの女王様役に未成年者を使ってい
たという容疑。この店は現在もSM喫茶「アフロディーテ」と
して新宿で営業中らしく、まあ言ってみればこの種の店の先駆
者的存在というところでしょうか。

 最後に、沼正三代理人、天野哲夫氏について。
沼正三氏の正体については、元裁判官の倉田卓次氏という説が
最も有力であり、私自身、「裁判官の書斎」(勁草書房)とい
う倉田卓次の名で出ているエッセー集を読んで沼正三=倉田卓
次説が正しいという感を強くしましたが、いつからか天野哲夫
氏が沼正三氏の名を襲名してしまったようなんですね。「S&
Mスナイパー」誌に連載され、ミリオン出版から単行本として
出た「続・家畜人ヤプー」は天野哲夫氏の作品とみて間違いな
かろうと思います。
 天野氏は、知的障害者を装っては、美容院など「女の園」に
入り込み、そこで使役されるというような離れ技を得意とする
行動派のマゾヒスト。その昔(昭和37年頃)、「裏窓」(久
保書店)というSM雑誌に阿麻哲郎というペンネームで「畜獣
デリムソン」という「ヤプー」にヒントを得たとおぼしきSF
的マゾ小説を連載していたのも実は天野氏であります。
「ヤプー」ほど気宇壮大ではないが、この小説は女権革命後の
未来社会が一応、舞台。男はすべてデリムソンという畜獣にされ、
女性はデリムソンの咽喉部に人工子宮を作ることで、妊娠、出産
からも解放される、とそんなストーリーが面白くて、私は「畜獣
デリムソン」の単行本化を希望するといった趣旨の手紙をかつて
天野氏に出したことがありました。その後、単行本化の件には直接、
言及しておられなかったが、「愚生の駄文に、まあよく色々と付き
合って下さり、嬉しいやら、恥ずかしいやら恐懼感激して・・・」
といった、いかにもマゾ的な文体のお返事を頂きました。
 しつこいようですが、「畜獣デリムソン」の単行本化を、今
でも私は、心密かに待ち望んいるのです。
 

posted by 下等遊民 at 18:15| Comment(7) | TrackBack(7) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

こんばんわ。

「家畜人ヤプー」に関しては僕も言いたいこと書きたいことがいっぱいあるんですよ。だけど、ネットの世界での人気にはちょっと戸惑ってたりして^^ 今更そんな人気ものになってもらっちゃっても困ってしまいますよね。
 僕が初めて読んだのは中学生の頃でしたが、実はその刺激の強さにちょっとついていけなかった記憶があります。すでに小学5年生ぐらいのころに「SMキング」(拾ったもの)に出会っていたので、バリバリのマゾっこという自覚はあったのでしたが、もともと文学的にはうとくて、中学の頃は芥川龍之介を絶賛する親友を「うざい」と思ったものでした。だけど、高校時代に読んだ谷崎潤一郎にはハマって、思春期には耽美派マゾ文学青年になっていました。
 あれ?なんの話だったか、あ、そうそう、家畜人ヤプーのことってマニアックにはよく知らなくて、右翼団体のエピソードは興味深く拝見しました。
 アフロディーテも最近TBくれたはるかさんとこにリンクが張ってあってエントリー記事にもあったので印象に残っていたのですが、新興のフェティッシュバーだと思っていたら老舗だったのですね。今度行ってみようかな^^
(田舎ものはミーハーだから ↑ )

「ある夢想家の手帖から」も愛読書のひとつでしたが、去年「マゾヒストの遺言」を読んで改めて沼さんの偉大さを再認識していたところでした。
 「サブカル雑食手帳」は読み応えありすぎで、おいそれと僕みたいなおバカブログがTBするのはおこがましいかなとも思うのですが、近いうちにヤプーネタまたは沼さんネタでひとつエントリーしてみようかと思っています。

 長々と失礼しました。
Posted by Homer at 2005年08月22日 01:10
はじめまして kumariです
私のブログにTBありがとう
ジャンルはアダルトにしていますが男のマゾフィズムをまじめに愛してやまないプライベートサイトです ただのエログにはしたくないと思っているのだけど・・・
最近ではHPよりもブログの方がトップページに
なりつつありますが・・(^_^;)

私も沼正三の隠れ小ファンですが
こんな裏話は知りませんでした
沼正三=天野哲夫=倉田卓次ですか^^

色々な説が飛び交っていますね
面白い記事でした
楽しませてもらいました
これからも宜しく!!


Posted by mistresskumari at 2005年08月24日 19:38
TBありがとうございました。
こちらからもさせていただきました。
より詳細なヤプーの話、大変興味深く
読ませていただきました。

私の方も太田出版版の本の画像と
劇画版の画像も新たにアップしてみました。
Posted by ユカリーヌ(月灯りの舞) at 2005年08月24日 22:30
追記です
HPの方の独り言に 乱歩の「人間椅子」沼正三についてふれた日記というか独り言を書いていますので
もし興味があれば覗いてみてください
ブログとはまったく違う色合いになっています

貴サイトをリンクさせていただきたいのですが
宜しいでしょうか?
Posted by mistresskumari at 2005年08月24日 22:50
TBありがとうございます。
「家畜人ヤプー」、噂は聞いていますがそんなに人気なのですか。生憎まだ読んでいませんが、面白そうですね、チェックしておきます。私は江戸川乱歩、谷崎潤一郎あたりからSMの世界に入ったクチなので、こういう活字から繰り広げられる世界には弱いと思われます。
Posted by 鈴音 at 2005年08月30日 12:23
コメントもせずにTBしてごめんなさい。

そして、

にもかかわらず、
私のブログにコメントを残していただいて、
ありがとうございます。

また、拝見させていただきますので、
宜しければ、私のブログにも、
遊びに来てくださいね。
Posted by はるか at 2005年09月03日 13:11
はじめまして。
いつも拝読させていただいております。
ヤプー好きがこんなにいらっしゃるとは(笑)

私もコツコツとヤプーを集めていますので、遊びにいらして下さい。

またTBもさせて頂きますのでよろしくお願いします。
Posted by しろくろ at 2006年03月29日 14:07
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