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サブカル雑食手帳

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2005年09月04日

私の奇人愛好癖 梅原北明について

しばらく御無沙汰してしまった「私の奇人愛好癖」、今回は昭
和初期のエロ・グロ・ナンセンス時代、宮武外骨に勝るとも劣
らぬ諧謔精神と反逆精神で当時の裏文化をリードし続けた「好
色出版の帝王」梅原北明を取り上げてみたい。
北明の人となりをいきいきと活写した野坂昭如のモデル小説
「好色の魂」を読むと、彼のスタンスが決して単なる営利追求と
しての好色本出版ではなく、それがどこまでも反権力闘争の一環
であったことが、随所で強調されている。
野坂自身、自分が編集長を担当していた「面白半分」という
サブカル雑誌に永井荷風が秘密裡に書いたといわれるエロ小説
四畳半襖の下張り」を掲載した事で、わいせつ文書頒布
の罪に問われ、長期に亘る裁判闘争を余儀なくされたという経験があるだけに
、北明と自分自身をこの作品の中でだぶらせている事は容易に
窺える。やや北明にたいして贔屓のひき倒しのきらいがあるの
も、おそらくそうした事情が関与しているのであろう。
それはともかくとして北明の出版活動を概観してみて驚くのは、
バルカン・クリーゲ」「カーマスートラ」「ファニー・ヒル
」など戦後、色々と物議を醸すことになる海外の札付きの好色
本を、既に戦前において次々と手掛けていることである。また
変態資料」や「グロテスク」などの雑誌発行が、終戦後に氾
濫することになるカストリ雑誌の手本になったことは明らかで
、その点でも戦後の裏文化に対する北明の影響力は量り知れな
いものがある。
因みにネット検索で雑誌「グロテスク」の目次から目にとまっ
た記事を幾つか拾い上げてみると「艶書蒐集病患者」「世界便
所発達史」「女肉を食ふ話」「世界食人肉考」「人肉料理」な
ど、猟奇趣味をかき立てられるものが並んでいて、北明が「
エロ」だけでなく「グロ」の領域にも、少なからず重きを置い
ていたことが見てとれる。
戦争の勃発とともにエロ・グロ・ナンセンスは「冬の時代」を
迎えることになるのであるが、敗戦後、再び焼跡の廃墟に未曾有の
エロ・グロ・ナンセンス全盛時代が到来し、誌名に「変態」や「猟
奇」の文字を入れたカストリ雑誌が百花繚乱と巷に溢れること
になる。まさに北明の天下のような時代が到来したわけである
が、皮肉にも北明は敗戦の翌年、発疹チフスが原因で帰らぬ人
となってしまうのだ。
もし北明が、もう少し長く生き続けていてくれたら、きっと他
の類誌を圧倒するような破天荒なカストリ雑誌を発行していたに
違いない。そう考えると敗戦の翌年の彼の病死は誠に惜しまれるが
、その「好色の魂」は戦後になって、丸木砂土、高橋鐵などによっ
て受け継がれていくことになるのである。

posted by 下等遊民 at 17:40| Comment(0) | TrackBack(1) | 私の奇人愛好癖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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