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サブカル雑食手帳

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2008年04月03日

赤線廃止50周年

 先日、日刊ゲンダイ(3月29日号)の片隅に「出版トピッ
クス」として次のような記事が載っているのを見て、今年がち
ょうど赤線廃止50周年にあたるのだということに気がついた。

 「50年前の4月1日に『売春防止法』の罰則規定が施行さ
れ、廃止された赤線。その赤線の娼婦から現代のソープ嬢まで
を一挙紹介した娼婦小説集が刊行された。
 伊藤裕作著『娼婦学ノート』(データハウス 1700円)
は、田村泰次郎『肉体の門』から五木寛之『青春の門 自立篇』、
吉行淳之介『夕暮れまで』、重松清『なぎさの媚薬』までの
35作を取り上げ、著者が風俗現場で出会った女性たちとの
エピソードを交えて読み解く。それぞれの時代、作家がとらえ
た娼婦の実像が鮮明な像を結ぶ一冊だ。『戦後の性風俗の歩み
と娼婦小説』相関表付き。」

 50年前ってことは、この時20歳だった人が現在70歳に
達してるわけだから、今や赤線という言葉を聞いて何らかの感
慨を覚えちゃったりするのはかなりの年配者に限られるのでは
なかろうか。私の場合、赤線という言葉でまず想起されるのは、
吉行淳之介の娼婦小説「原色の街」であったり、日活ロマンポ
ルノ「赤線最後の日 昭和33年3月31日」であったりする
わけだが、赤線という場所が一種特有の情緒漂う世界であった
ということはこれらの小説や映画からも何となく推察できる。

日活ロマンポルノ「赤線最後の日 昭和33年3月31日」は、
宮下順子扮する赤線の娼婦に風間杜夫扮する貧乏学生が入れ上
げ、本を質入れしたり売血したりして通いつめるというお話。
だいぶ前に見た映画なので細部はほとんど忘れてしまっており、
現在覚えているのはこの貧乏学生がいつも啄木の詩集「一握の
砂」を持参していて 「はたらけど はたらけどなおわがくら
し楽にならざり ぢつと手を見る」とか「ふるさとの山に向ひ
て 言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」といった
詩を娼婦に読んで聞かせる場面と、いよいよ赤線最後の日の夜、
客たちや娼婦たちが店の前で「螢の光」を合唱する場面ぐらいか。

 さて売春業そのものは赤線廃止後も主としてトルコ風呂(後
にソープランド)などに受け継がれていくことになったわけだ
が、1980年代に入ると性風俗産業も著しく多様化し、覗き
部屋、イメクラ、ファッションヘルス、SMクラブ、ブルセラ
(女子高生の使用済み下着などを販売する店)などいわゆる非
売春系のニュ−風俗の方が勢いを増してくることになる。これ
は直接的な性体験よりもヴァーチャルな性体験の方に人気が移
行してしまったことを意味するわけだが、この間の事情につい
ては内藤篤氏が「走れ、エロス!」という著書の中で興味深い
考察を展開しているので以下に引用しておくことにする。

 「こうした時代にあっては、娼婦との心的つながりを求めて
の買春=売春行為(それが小説の中だけの作り事なのかどうか
はさておき、ここではイメージとして消費される買春=売春行
為に着目したい)のような、つまり永井荷風的というか芳行淳
之介的というか、赤線廃止前に措定されたと覚しき旧来的な売
春のあり方はもはや存在しない。『身は売っても心は売らない』
というような前提があって、それを乗り越えてゆくところに旧
赤線的な性の探究者たちの冒険の所在ともいうべきものがあっ
たのだが、こうしたプロのマーケットに素人が参入したことで、
もはや現代の娼婦の側にはそうした自己規制もしくは浪漫主義
的媚態はない。あるいはこれとは全く逆に、心的つながりどこ
ろか、性的接触すらも拒むというあり方すら多くなってきてい
るのだ。これは旧来的あり方を是とする人々にとっては『ゲー
ムの規則』の不当な変更と受け取られよう。赤線は昭和三十三
年(1958年)に廃止されたが、こうした買春=売春につい
て最後のノスタルジーを持っている人々とは、おそらくブルセ
ラ摘発に燃えたオヤジたちだったのではあるまいか。ブルセラ
に代表されるような『軟弱な』セックスのあり方に我慢がなら
ないのだ。かくて、ブルセラとはこうした売春の変容=性のヴァー
チャル化の典型なのだということもできる。」

(附記)なお先にも書いたように、現時点では旧赤線派は「オ
ヤジたち」というカテゴリーで括ることのできる年齢をはるか
に越えてしまっているが、「走れ、エロス!」という本が出た
のが1994年であることを考慮して上記引用文を読んで頂き
たい。








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posted by 下等遊民 at 07:53| Comment(0) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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